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東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文(叙)

東海道中膝栗毛発端 原文31

膝栗毛発端叙

はるの日の長旅ながたびも、馬士まごうたの竹に、雀色すゞめいろ時のとまりには、奇妙きみやう希代きたい滑稽こつけいはきて、衆人もろひと腮顔おとがい釣匙かきがねを掛させ、かの佐々木梶原かぢわらが、生唼いけずき磨墨するすみより、はるかまさり、千里の駿足しゆんそくも及ばざる膝栗毛ひざくりげだいせし、その

東海道中膝栗毛発端 原文31

発端ほつたんしよけみして、感称かんしやうの余り、ばつ文を乞ふて、智嚢ちゑぶくろやぶれるほど、そこ無性むしやうはたきしに、原来もとより三文のたくわへさておき、一文不智ふちやつがれなれば、ことはざにいふ、蟷螂とうろうをの猿猴えんかうが月、されどもどく蒼蠅さうようたとへのごとく、此ひざくり毛の

尻尾しりを執付とりつきたゞ意気いきなりを、ひつかく事しかり。
 小舶街
  旭亭一桃