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東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文23

親方おやかたのうちの引負ひきおひ、十五両なくてはつぐなはれぬといつたは、引負ではなくて、この女を片付代かたづけしろの十五両か。」 北八「さやう/\。」 弥次郎ヱヽおきやァがれ、このべらぼうやろうめ。よくおれをとんだめに、あはせやァがつた。」 北八ナニとんだめにあふものか。かねさへかゝらねへけりやァ、いゝじやァねへかへ。」 弥次「いゝとはなんのことだ。コレ其金ゆへに、おらァ女房にようぼうをさらけ出してしまつて、今夜こんやからひとりでにやァならねへは。」 北八「そのかはりまた、わけい女房をゆづつたから、申分はあるめへ。」 弥次「たはごとつくしやァがれ。

あの女のつらが、ふた目とも見られるつらか。いめへましゐやろうめだ。」【ト、まつくろになつてはらをたて、ひとつふたついひつのりて、弥次郎こらへず北八にぶつてかゝる。きた八もやつきとなつてからかつてゐるうち、おつぼはしきりに、むしがかぶると見へ、ウン/\うなつてくるしがるをもかまわず、こなたにはやみくもと、つかみあふてゐるうち夜あけて、なかう人のいも七、しやうばいものゝかひ出しにゆくとて、こゝのうちへをとづれたるが、何やらうちには、ばつたくさをとして、女のうめくこへもきこゆるにぞ。いも七これはと、そとより戸をあけんとするにあかず。たゝいてもあけざれば、やにはに、そとよりひつぱづしてはいると、弥次郎見るより】 弥次ヤアいも七か。よくも/\、このやろうめと馴合なれやつて、おれをはめたな/\、合点がつてんしねへぞ、すまねへぞ/\。」 いも七「ナニ、はめたとは何のことだ。」 弥次「なんの事だもすさまじゐ。ふてへやつらだ。」【ト、又いも七にとつてかゝると、いも七はら