たら、あしたの昼時分、隠居のほうからくるはづに間違はないといふことだ。ソリヤア請合。きづけへなしに、今夜はしつかり楽みなせへ。」【ト、弥次郎がせなかをひとつくらわせて出てゆく。弥次郎かどぐちをしめて】 弥次「コリヤア寒くなつた。時に茶漬でもくはねへか。」 おつぼ「イヽヱよろしうござります。」 弥次「そんなら、もふねよふか。」 おつぼ「おとこをとりませう。」 弥次「ヲイ/\おれが出してやろう。」【ト、戸だなより、やぶれぶとんにかいまきなど、とりいだす所に、おもての戸をトン/\/\】 弥次「ヱヽ今頃にだれだ/\。」【ト、いひつゝも、さては今おひ出した女ぼう、このことをかぎつけてや、ふりこんできたるならんか。たゞしはおやぶん、いさくさをいひに来たか。何にもせよ、見つけられてはめんどうなりと、今の女ぼうにむかひ小ごへにて】 弥次「コレ/\ひよんなことがある。
此長屋の作法で、長屋のものが嫁をとると、長屋中の者が来て、其嫁の尻をさすつてみるが定法。今そなたの来たことを、どふしてしつてやら、それでさすりに来おつたに違ひはない。そなたは懐妊のよし。おなじくは、まだ今宵は来ませぬといつて、見せたくねへが、どふであろう。」 おつぼ「ヲヤ/\わたしはいやだのふ。殊にたゞの身ではなし。しらないお人に、このおゐどを撫させる事はいやだねへ。」 弥次「そんならどこぞへかくしてへものだが、此通二階はなし。ヲツトあるぞ/\、窮屈ながら、