弥次さん、おめへも腹がたつたろうが、どふぞ了簡して、この取始末をしてくんなせへな。」 弥次「おれをば、いろ/\な目にあはせる。」 北八「なんぼ勘当同然にした女でも、斯なつては親の所へもしらせずばなるめへ。誰をやつたものだろう。」 いも七「ソリヤアわしでもいつてやろうが、ぜんてへ、是はどふいふ訳か、さつぱりわからねへ。おらが新道の肴やに預つてゐた女、余所の隠居の妾だが、片付たい世話してくれろと頼れたから、こゝの内へ仲人したが、今きけばおめへの女房とは、どふした
理屈だ。」 北八「マア/\あとでわかる。其肴屋といふは、おいらが親かたの所の出入。預けておゐたは、やつぱりおいら、マアそれよりか、はやく親の所へしらせてへ。それも、その肴屋までしらせると、親の内へあそこからしらせてくれる。」 いも七「そんならいつて来やせう。」【ト、いも七は出てゆく。きんじよの人々手つだいて、そこらとりかたづけ、めい/\くやみをのべあいさつして、みな/\ひとまづかへると】 北八「何にしろ、わつちはちよつといつて来やう。ゆふべそつと出た侭だから、あとはいゝやうにたのみます。」【ト、かみいれから金二歩出して弥次郎にわたし、出かけんとする所へ、ほうばいの与九八きたり】 「ヲヤ/\きた八どの爰にか。親かたが