お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文28

せう。ハヽヽヽヽ」 北八「かわへそうに、洒落しやれ所じやァねへ、サア/\はやく片付かたづけてくんなせへ。」【ト、なまゑい大ぜいよつてたかつて、むだやらしやれやら出ほうだいな事しやべりながら、ほとけをおけの中へおさめて、香花を手向ける所へ、おつぼのてゝおや、なみだをふき/\、たづねきたりて】 「アイゆるさつしやりまし。わしやハアおつぼのをやでござらァ。」 北八「是はよふこそ、まづこちらへ。」 ヤレ/\うゐことをしおりました。わしやハア田舎いなかもんでござるから、義者ぎしやばつて、むけちなくぼい出しましたが、こんなになるべいたァ、おもひおりませなんだ。ドレ/\むすめはどこにゐおります。ちよつくりつらサア、見せてくれさつしやりまし。」 

弥次ヱヽおめへ、もふちつとはやく来なさればいゝに。もふ桶の中へさらけこんでしまつたものを。のふ、いも七。」 いも七イヤしかし、とつさんの身では、見たいは道理どふり/\、どをりにきつねの子じやものをと、けつかる。ハヽヽヽさらばお開帳かいちういたそふか。」【ト、棺桶のなはをとき、ふたをあけて見すれば、をやぢめがねをかけ、つく/\と見て】 コリヤハアちがつたァもし。」 弥次ナニちがつたァ、何がちがひやした。」 ほとけがちがひ申た。此佛にやァくびがござらない。そして、わしのむすめは女でござるに、コリヤハアをとこ死人しにんと見へ申て、胸髭むなひげがはへてござらァ。」 いも七ナニ首がないとは。ドレ/\ほんに

東海道中膝栗毛発端 原文28

忍ぶ草 めあてのちがう 隠れんぼ
五返舎半九