せう。ハヽヽヽヽ」 北八「かわへそうに、洒落所じやァねへ、サア/\はやく片付てくんなせへ。」【ト、なまゑい大ぜいよつてたかつて、むだやらしやれやら出ほうだいな事しやべりながら、ほとけをおけの中へおさめて、香花を手向ける所へ、おつぼのてゝおや、なみだをふき/\、たづねきたりて】 「アイゆるさつしやりまし。わしやハアおつぼの親でござらァ。」 北八「是はよふこそ、先こちらへ。」 親「ヤレ/\憂ことをしおりました。わしやハア、田舎もんでござるから、義者ばつて、むけちなくぼい出しましたが、こんなになるべいたァ、おもひおりませなんだ。ドレ/\むすめはどこにゐおります。ちよつくり顔サア、見せてくれさつしやりまし。」
弥次「ヱヽおめへ、もふちつとはやく来なさればいゝに。もふ桶の中へさらけこんでしまつたものを。のふ、芋七。」 いも七「イヤしかし、とつさんの身では、見たいは道理/\、どをりに狐の子じやものをと、けつかる。ハヽヽヽさらばお開帳いたそふか。」【ト、棺桶のなはをとき、ふたをあけて見すれば、をやぢめがねをかけ、つく/\と見て】 親「コリヤハアちがつたァもし。」 弥次「ナニちがつたァ、何がちがひやした。」 親「佛がちがひ申た。此佛にやァ首がござらない。そして、わしの娘は女でござるに、コリヤハア男の死人と見へ申て、胸髭がはへてござらァ。」 いも七「ナニ首がないとは。ドレ/\ほんに
忍ぶ草 めあてのちがう 隠れんぼ
五返舎半九