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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文20

▼開

ちつとの間、こゝへ/\。」【ト、売のこしのあき半櫃(はんびつ)あるをさいわい、ふたをあけて、かのおつぼをいれ、もとのごとくふたしておき、やがておもてのかけがねをはづし戸をあくれば、あんにさうゐして喜多八せきこんでとびこめば】 弥次「ヤア喜多八か。ヱヽ今時分(じぶん)にどふして来た。」 北八「イヤもふ/\、内に落着(をちつい)てゐられやせぬ。此間からおめへに頼(たの)んだ十五両の金の事。翌日(あす)は、店(たな)おろしにかゝるゆへ、ぜひ/\、あすの朝(あさ)まで、わつちが遣(つか)ひ込(こん)だ穴(あな)を埋(うめ)ておかねばなりやせぬ。それが出来(でき)ねへと、忽(たちまち)百日の説法(せつぽう)、屁(へ)ひとつ。おめへのいふには、随分(ずいぶん)心当(こころあた)りがるから、讃談(さんだん)してやろうといひなさつたによつて、じつと待(まつ)て

ゐたが、今もつてさたがないから、あんまり気(き)づけへさに、寝所(ねどころ)からそつとぬけて来やしたが、いよ/\そのかねは出来(でき)やせうかね。」 弥次「しれた事よ。あしたの昼(ひる)までには、きつと出かしてやる。そこへいつちやァ男(をとこ)だ。なんぼこんなに、しみつたれなくらしで居(ゐ)ても、さあといへば、拾両や十五両の目くさりがね、工面せうといつたがせうがにやァ。ちげへはねへから、落着(をちつい)て居(ゐ)さつし。」 北八「そいつはありがてへ。其かわり百倍(ひやくばい)にして此恩(おん)を返(けへ)しやす。此間からいふとをり、番頭(ばんとう)はなくなる、