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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文12

▼開

縄(なは)をかゝれ。国元(くにもと)へひいていかずに。」【ト、くわいちうより、はやなわを取いだし立かゝれば、弥次郎やつきとして】 弥次「ナニ縄をかゝれたァどふいふ理屈(りくつ)。わつちが女房をもちやァ、縄をかゝらにやァなりやせんかへ、とほうもねへ。モシヱ鯵切(あぢきり)を二本さしなさつたとつて、それが恐(おそろ)しゐものでもござりやせんわな。」 兵五「イヤお身、がゐにかさ高(だか)にお出やるな。コリヤよく聞け。今度(こんど)いんもふとをめしつれたは、家老中(からうぢう)の指図(さしづ)に依(よつ)て罷越(まかりこし)たぞ。其訳(そのわけ)といふは、相役(あいやく)の横須賀(よこすか)利金太(りきんだ)かたより、此いんもふとを婦(ふ)

妻(さい)に貰(もら)ひたきよし媒(なかだち)をもつて申こした。身にとつては過分(くはぶん)の聟(むこ)ゆへ、早速(さつそく)に同心(どうしん)して結納(ゆいのふ)まで受(うけ)おさめた所に、いんもふとめは一筋(ひとすじ)に、こなたと夫婦(ふうふ)の契約(けいやく)をした上は、たとへ親兄弟(おやけうだい)の指図(さしづ)でも、ほかへ縁(えん)につかずこたァいやだといふ。身ども魂消(たまげ)まいものか。アゝせず事がないと、それから其利金太(りきんだ)かたへ使(つかひ)をつかはし、弥次郎兵衛と申すものと妹(いんもふと)めが密通(みつつう)をいたせしこと、神(しん)もつて存(ぞん)ぜず。それゆへ結納(たのみ)も受納(じゆのう)