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東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文15

女房にもたれるものか。しかたがねへ、どふとも御勝手かつてになせへまし。」【ト、かくごして両手をうしろへまはせば、兵五左衛門たちかゝり、すでに弥次郎をいましめんとするを、女ぼうおふつすがり付】 おふつモシ/\段々だん/\様子やうすうけたまはりますれば、御尤ごもつともな事。去ながら、現在げんざいおつとなはめにかゝり、なが道中だうちうはちをさらし、おくにでもしもいのちかゝはることやなどあつては、わたしのかなしさ。モシ今おまへのいひなさるには、たとへ此身はどふなつても、艱難かんなん辛抱しんぼうした女房はすてられぬといひなさつたが、わたしには千倍せんばい。もふなんにもいひませぬ。

わたしにはひまを下さりませ。あの妹御いもふとご駿河するがからの馴染なじみとあらば、わたしよりはさきの事。そをふとおつしやるも無理むりではない。サアこうわけていふうへに、いとまをもくれず、おさぶらひさまの手にかゝる了簡りやうけんなら、まづわたしからさきへしにます。」【ト、なく/\、ながしもとのほうてうをとつてひねくりまはすを、弥次郎おさへて】 弥次コリヤ/\何をする馬鹿ばかものめが。」 おふつイヱ/\それでも。」 弥次ハテさて、それほどにおもつめた事ならしかたがねへ。ちつとのいとまをとつて親分おやぶんの所へでもいつてゐてくれ。大事でへじ女房にようぼうを今さらふな