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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文15

▼開

女房にもたれるものか。しかたがねへ、どふとも御勝手(かつて)になせへまし。」【ト、かくごして両手をうしろへまはせば、兵五左衛門たちかゝり、すでに弥次郎をいましめんとするを、女ぼうおふつすがり付】 おふつ「モシ/\段々(だん/\)の様子(やうす)を承(うけたまは)りますれば、御尤(ごもつとも)な事。去ながら、現在(げんざい)夫(おつと)が縄(なは)めにかゝり、永(なが)の道中(だうちう)に恥(はち)をさらし、お国(くに)でもしも命(いのち)に拘(かゝは)ることやなどあつては、わたしの悲(かな)しさ。モシ今おまへのいひなさるには、たとへ此身はどふなつても、艱難(かんなん)辛抱(しんぼう)した女房はすてられぬといひなさつたが、わたしには千倍(せんばい)。もふなんにもいひませぬ。

わたしには暇(ひま)を下さりませ。あの妹御(いもふとご)は駿河(するが)からの馴染(なじみ)とあらば、わたしよりはさきの事。添(そを)ふとおつしやるも無理(むり)ではない。サア斯(こう)わけていふうへに、暇(いとま)をもくれず、お侍(さぶらひ)さまの手にかゝる了簡(りやうけん)なら、まづわたしからさきへ死(しに)ます。」【ト、なく/\、ながしもとのほうてうをとつてひねくりまはすを、弥次郎おさへて】 弥次「コリヤ/\何をする馬鹿(ばか)ものめが。」 おふつ「イヱ/\それでも。」 弥次「ハテさて、それほどに思(おも)ひ詰(つめ)た事ならしかたがねへ。ちつとの間(ま)、暇(いとま)をとつて親分(おやぶん)の所へでもいつてゐてくれ。大事(でへじ)の女房(にようぼう)を今さらふな