髭だらけで、胸先から腹ぢうに癬がべつとりで、足は年中雁瘡でざら/\して、イヤまた寝た時寝息の臭い男。」 弥次「ヤイ/\/\こいつめが、亭主を羅利骨灰にしやァがる。」 おふつ「ヲホヽヽヽそれでも男といふものは、すたらねへもので、女とさへいやァ、眼一でも鼻欠でも、ただは通さぬ気性。さだめし念比しられた人も邂逅にはありましたろうが、あんまりこのもしい男でもござりませんから、おまへさんがたのやうに後を追て来た人は
ひつとりもござりません。この狭いうちに、女房がふたり三人あつたら、大家から根太がたまらねへ店を明ろと追出れるでござりませう。人のしらねへうちに、はやくつれてお帰なされませ。」 兵五「ヱレハイ最前から、つべらこべらと此女中よくしやべるが、其方は先なにものだい。」 おふつ「アイわたしかへ、弥次郎兵衛の女房でござります。」 兵五「アニ女房だい、見たくでもないヤア。これ弥次郎兵衛、お身女房をもつたか。ヱレ/\是非に及ばない、