道中膝栗毛発端
東都 十返舎一九編
武蔵野の尾花がすゑにかかる白雲と詠しはむかし/\、浦の苫屋、鴫たつ沢の夕暮に愛て仲の町の夕景色をしらざる時のことなりし。今は井の内に鮎を汲む水道の水長にして、土蔵造の白壁建つゞき、香の物桶、明俵、破れ傘の置所まで、 地主唯は通さぬ大江戸の繁昌。他国の目よりは大道に金銀も蒔
原文
東都 十返舎一九編
武蔵野の尾花がすゑにかかる白雲と詠しはむかし/\、浦の苫屋、鴫たつ沢の夕暮に愛て仲の町の夕景色をしらざる時のことなりし。今は井の内に鮎を汲む水道の水長にして、土蔵造の白壁建つゞき、香の物桶、明俵、破れ傘の置所まで、 地主唯は通さぬ大江戸の繁昌。他国の目よりは大道に金銀も蒔