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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文29

▼開

コリヤア首(くび)がねへ。弥次さん、おめへどふした。」 弥次「ナニおいらがしるものか。そこらにやァ、おちてはねへかへ。」 親「ヤレハア此衆(このしゆ)はとんだ「人達(ひとたち)だ。サアうらが娘(むすめ)はどうさつせへた。しんだのなんのと嘘(うそ)ばつかしつかつしやる。サア娘を爰へ出しなさろ。」 弥次「出せとつて外にやァねへ。とほうもねへおやぢめだ。」 親「コリヤア、ハアすまない/\。」 北八「なる程、とつさんのいふのは尤(もつとも)だ。何にしろ首がなくちやァ、つまらねへ。」 親「インネ/\田舎(いなか)もんでこそあれ、うら頭(かしら)百姓(びやくしやう)もしたもんだ。お家主(いへぬし)どのへことわつて、ゑずい目にあわせてくれ

べい。」【ト、だん/\こはだかになり、やかましくいふゆへ、そばにゐあわせしひと/\いろ/\なだめてもいつこうきゝいれず。大やさまがこのやうすを、いさいにきいてかけつけ】 大や「さて/\、今聞(きゝ)ましたが、大変(たいへん)なことでござる。何にいたせ、しんだものゝ首(くび)のないといふは。」【ト、はやおけのうちをのぞき見て】 「イヤ/\おやぢどの、きづかいさつしやるな。首はあります。」 親「あるとは、どこにあります。」 大や「コリヤア佛(ほとけ)を逆(さか)さまに入れたのでござる。ハヽヽヽヽ。」 親「ハアそれで落着(をちつき)ました。コリヤどなたも御太儀(たいぎ)でござる。」【ト、これより夜にいりて、そうれいをなしあと、ねんごろにとぶらひけるが、さてしも北八は、せつかくしんぼうせしおやかたの内を出されて、又弥次郎のかたに居そうろうとなり、たがひにつまらぬ身のうへにあきはて、いつそのこと、まんなをしにふたりづれで出かけまいかとのそうだんが、