お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文21

※底本では、左ページが欠落していましたが、早稲田古典籍総合データベースの『道中膝栗毛 発端』を使って補完してあります。

をやかたも今にめでたくなりやすから、あと後家御ごけごを手にいれさへすりやァ、すぐにわつちが旦那だんなさま。どふかしばゐの敵役かたきやくがいふようなこつたが、是ばつかりはちげへなし。極々ごく/\内々ない/\の所は、もふ出来できかゝつてゐやすから、今が大事でへじの所。爰で十五両のかねがねへと、しくぢつてあぶもとらずはちもとらずだから、どふぞおたのみ申やす。」 弥次「おれも手めへをおもふは、身をおもふだから、其咄そのはなしのとをりにいきさへするとたがいの為だ。あすの昼時分ひるじぶんには、みゝそろへて十五両、

きつと間にあはせてやるぞ。」【ト、此はなしのうち、はんびつのふたをうちよりおしあけて】 おつぼモシ/\どふぞして下さりませ。はらいたくてどうやらうみそふになりました。アヽくるしゐ/\。」【ト、むせうにうめき出せば、弥次郎大きにうろたへ】 弥次ヱヽそいつはこまつたものだ。コレ/\きた八、手めへ子をうむ女の手伝てつだひをした事はねへか。」 北八ナニとんだことを。イヤかみさんが、いつのまにはらんだのだ。さつぱりしらなんだ。となりのかみさんでもおこして来て、たのむがいゝ。」 弥次イヤ/\ちつとわけがあつて、となりへもさたなしに、こつそりとやりてへ。マアそこへでもわかしてくれ。」