お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文21

▼開

※底本では、左ページが欠落していましたが、早稲田古典籍総合データベースの『道中膝栗毛 発端』を使って補完してあります。

親(をや)かたも今にめでたくなりやすから、跡(あと)で後家御(ごけご)を手にいれさへすりやァ、すぐにわつちが旦那(だんな)さま。どふか芝(しば)ゐの敵役(かたきやく)がいふようなこつたが、是ばつかりは違(ちげへ)なし。極々(ごく/\)内々(ない/\)の所は、もふ出来(でき)かゝつてゐやすから、今が大事(でへじ)の所。爰で十五両のかねがねへと、しくぢつて虻(あぶ)もとらず蜂(はち)もとらずだから、どふぞおたのみ申やす。」 弥次「おれも手めへをおもふは、身をおもふだから、其咄(そのはなし)のとをりにいきさへすると互(たがい)の為だ。あすの昼時分(ひるじぶん)には、耳(みゝ)を揃(そろ)へて十五両、

きつと間にあはせてやるぞ。」【ト、此はなしのうち、はんびつのふたをうちよりおしあけて】 おつぼ「モシ/\どふぞして下さりませ。腹(はら)が痛(いた)くてどうやら産(うみ)そふになりました。アヽくるしゐ/\。」【ト、むせうにうめき出せば、弥次郎大きにうろたへ】 弥次「ヱヽそいつはこまつたものだ。コレ/\きた八、手めへ子を産(うむ)女の手伝(てつだひ)をした事はねへか。」 北八「ナニとんだことを。イヤかみさんが、いつのまに孕(はら)んだのだ。さつぱりしらなんだ。隣(となり)のかみさんでもおこして来て、たのむがいゝ。」 弥次「イヤ/\ちつと訳(わけ)があつて、隣(となり)へもさたなしに、こつそりとやりてへ。マアそこへ湯(ゆ)でもわかしてくれ。」