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東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文17

拾五両つけて片付かたづけたいと、わしがたのまれてるから調度てうどよいが、しかし女房のある上へはどふもと、はなしにつゐて、おれもその拾五両ほしい最中さいちう、たとへはらにはをにの子がやどつてゐよふが、かねさへもつてくれば、年増としま女房にあきた所、こいつはみやうだとこの狂言けうげんをかいて、きさまたちふたりをたのんで、まんまとじやう首尾しゆびにやりはやつたが、かの持参金ぢさんきんのしろものは、いよ/\きうに来るはづか、どうだ/\。」 いも七イヤくるはづとも/\。おめへもかねいそぐといふ。さきでも

はらをちそふだから、一刻いつこくもはやいがいゝと、せきこんでゐられるから、そこで今夜こんやふけてから、そつとかごでこゝへむけてくるはづにしておゐた。ちよつぴりさけでも出さにやァなるめへが、内にとつたのがありやすか。」 弥次ヤア/\今夜くるのか、ヱヽそれはまた早急さつきうな。それとしつたら、けふ髪月代かみさかやきでもしておこうものを。ドレちよつとひげばかりでもそつやう。」 いも七アヽ、コレ/\今頃いまごろどこに髪結床かみゆひどこがあるものだ。そんなことよりか、さけ支度したくでもするがいゝ。コレサおめへなにをまご/\する。」 弥次イヤ何も