拾五両つけて片付たいと、わしがたのまれて居るから調度よいが、しかし女房のある上へはどふもと、はなしにつゐて、おれもその拾五両ほしい最中、たとへ腹には鬼の子がやどつてゐよふが、金さへもつてくれば、年増女房にあきた所、こいつは妙だと此狂言をかいて、きさまたちふたりを頼んで、まんまと上首尾にやりはやつたが、彼持参金のしろものは、いよ/\急に来る筈か、どうだ/\。」 いも七「イヤくるはづとも/\。おめへも金が急ぐといふ。さきでも
腹が落そふだから、一刻もはやいがいゝと、せきこんでゐられるから、そこで今夜更てから、そつと駕でこゝへむけてくるはづにしておゐた。ちよつぴり酒でも出さにやァなるめへが、内にとつたのがありやすか。」 弥次「ヤア/\今夜くるのか、ヱヽそれはまた早急な。それとしつたら、けふ髪月代でもしておこうものを。ドレちよつと髭ばかりでも剃て来やう。」 いも七「アヽ、コレ/\今頃どこに髪結床があるものだ。そんなことよりか、酒の支度でもするがいゝ。コレサおめへなにをまご/\する。」 弥次「イヤ何も