どゝは夢にもおもはねへ。別れをするも、みんなおれがわりいからだ。」【ト、さすがの弥次郎も、女ぼうの手まへきのどくさふ。かたかげへまねきて、いろ/\に、だましつ、すかしついひふくめ、すゞりばことりいだし三くだり半をかきてやれば、びんぼう人のきさんじさ、きの身きたまゝ、くしばこにふろしきづゝみひとつ、ひつかゝへて、なみだながら、しほ/\として出てゆくと、兵五ざへもん、大小をとつてほうり出し】 「ヤレ/\重荷をおろした。ナント弥次さん、わしが仕打は妙でありませう。」 弥次「駿河ものゝ詞おそれ入さ。田舎侍の出立、いかな後家の質屋へ見せても、百石どりとは直打する男を棒手振の芋七にしておくは惜いもの。それにこのまた、矢場のお蛸が
田舎娘の身振、妙であつた。皆おれが自作の狂言で、ふたりを頼んで女房にいつぱいくわせ、追出したも、あの陰気ものに飽果たからの事。ひとつには急に拾五両といふ金がなければならねへことで、芋七きさまへふつと咄したら、きさまのいふには、ソリヤさいわゐの事がある、さる所の隠居が、内の腰本に手をつけ孕したゆへ、聟や娘の手前、しれぬさきにとて表向いとまを出して、請人の所へ内證で預けておかれたが、どうぞ腹の子ぐるめに金