をたて、小ぢからのあるにまかせ、弥次郎をねぢふせる。きた八とりさへてもきかず、ごつたかへして、たばこぼんをふみくだくやら、どびんのちやをぶちまけるやら、三人やみらみつちやに、さわぎたつるものをとに、きんじよとなりの人々、おひ/\かけつけ、かれこれととりさへるうち、おつぼはそこらをのた打まはり、くるしみたるが、ついに血をあげて目をまわし、たをれる】 北八「ヤア/\おつぼ、どふした/\。コレ芋来てくれ。可愛そふに、どふかしたそふな。」 いも七「コリヤ目をまはしたのだ。コレ/\、水だ/\。」 北八「おつぼヤアイ/\。」 となりのていしゆ「おつぼさまとは誰の事だ。モシ爰のかみさまはへ。」 いも七「コレこの目をまはしたがかみさま。」 となり「ハア弥次さん、おめへのおかみさまか。」 弥次「アイわつちが女房のやうでもあり、又ないやうでもあり。」 となり「ハアきこへた。きた八さまの
かみさまか」 北八「アイわつちのかゝあのやうでもあり、又ないやうでもあり。」 となり「マアなんにしろ、どつちのだかしれない。おかみさまヤアイ/\。」 いも七「コリヤつめたくなつた、もふいけねへ。」 北八「エヽいぢらしいことをした。弥次さん、医者をよびにやつてくんなせへな。」 となりのていしゆ「わたしが元宅さんでも呼で来てあげませうか。」 弥次「その序にお寺へもいつてもらひてへな。」【ト、此内ゐしやがくるやら、灸をすへるやら、よつたかつて、さま/\にしてみれども、むざんやおつぼは、かほのいろかわり、さつぱりいきはたへたるやうすに、きた八おもわずなきいだし】 「かわいや、只の身ではなし、今のさはぎに血があがつたのだろう。しかたがねへ、時に