お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文24

をたて、小ぢからのあるにまかせ、弥次郎をねぢふせる。きた八とりさへてもきかず、ごつたかへして、たばこぼんをふみくだくやら、どびんのちやをぶちまけるやら、三人やみらみつちやに、さわぎたつるものをとに、きんじよとなりの人々、おひ/\かけつけ、かれこれととりさへるうち、おつぼはそこらをのた打まはり、くるしみたるが、ついに血をあげて目をまわし、たをれる】 北八ヤア/\おつぼ、どふした/\。コレいも来てくれ。可愛かわへそふに、どふかしたそふな。」 いも七コリヤ目をまはしたのだ。コレ/\、水だ/\。」 北八「おつぼヤアイ/\。」 となりのていしゆ「おつぼさまとはだれの事だ。モシ爰のかみさまはへ。」 いも七コレこの目をまはしたがかみさま。」 となりハア弥次さん、おめへのおかみさまか。」 弥次アイわつちが女房のやうでもあり、又ないやうでもあり。」 となりハアきこへた。きた八さまの

かみさまか」 北八アイわつちのかゝあのやうでもあり、又ないやうでもあり。」 となりマアなんにしろ、どつちのだかしれない。おかみさまヤアイ/\。」 いも七コリヤつめたくなつた、もふいけねへ。」 北八エヽいぢらしいことをした。弥次さん、医者ゐしやをよびにやつてくんなせへな。」 となりのていしゆ「わたしが元宅げんたくさんでもよんで来てあげませうか。」 弥次「そのついでにおてらへもいつてもらひてへな。」【ト、此内ゐしやがくるやら、灸をすへるやら、よつたかつて、さま/\にしてみれども、むざんやおつぼは、かほのいろかわり、さつぱりいきはたへたるやうすに、きた八おもわずなきいだし】 「かわいや、たゞの身ではなし、今のさはぎにがあがつたのだろう。しかたがねへ、時に