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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文07

▼開

ねへかへ。そして犬(いぬ)の糞(くそ)も、てん/\の内の前(まへ)ばかり浚(さら)つて、長屋(ながや)のものは、なんだとおもつてゐるやら、ノウおくんさん。」【ト、むかふのうちのかゝしゆへ水をむけかけると、あがりくちにかたあしおろして、子どもにちゝをのませてゐる女ぼう、やがておりて出かけ】 おくん「モシナあんまり大きな聲(こへ)をして、そんなことをいひなさるな。奥(おく)のおけんつうが今手水(てうづ)にいつたよ。アノおしやべりも又大家(おほや)さんのおかみさんへ、いつそ追従(ついしやう)ばかりいつて、長屋(ながや)のことを、どふめへつた、かうめへつたと、いゝ苦労性(くらうせう)じやァねへかへ。それに聞(きゝ)なせへ、此間からあそこの内へ来てゐた居候(ゐそうろう)は、

アノかみさんの妹(いもふと)だといふこつたか、ナニあれがお屋しきに奉公(ほうこう)してゐたもすさまじゐ。ちよつと見てもしれてありやす。ありやァ、おへねへばんくるわせものだとよ。一昨日(おつとゐ)もどこか下谷(したや)のおやしきへ目見(めみへ)にいくとつて、つくりたつて出ていつたが、ナアニよその隠居(ゐんきよ)さまへ妾(めかけ)にいくので支度金(したくきん)が七両来たとさ。いやじやァねへかへ、あの顔(つら)で妾(めかけ)も気(き)がつよい。わつちらもこの額(ひたひ)のはげつてうがなくて、耳の際(きは)の痰瘤(たんこぶ)が、もふちつとちいさいと、妾にでも出て支度金(したくきん)