お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文(序)

東海道中膝栗毛発端 原文02

おのづからりゝしく 見ゆるあしもとは
これあつらへの 紺のたび人
十返舎一九

膝栗毛発端序

鬼門きもん関外くわんぐわい莫道遠とをしといふなかれ、五十三ゑき皇州くはうしうといへる山谷さんこくより東海道とうかいだうを五十三次とさだめらるよしをきけり。予此街道かいだうふでをはせて膝栗毛ひざくりげしよ

東海道中膝栗毛発端 原文03

あらはす。元来もとより野飼のがひ邪々馬じや/\むまといへども人喰ひとくひ馬にも相口あいくち版元はんもと太鼓たいこをうつて売弘うりひろめたる故、さいわゐ乗手のりてありて編数へんすうかさね、とをし馬となり、きやう大阪おほさかおよび芸州げいしう宮島みやじままでの長丁場ながてうば

かへりがけの駄賃だちん今年ことしぞく五篇、岐蘇路きそぢにいたる。弥次郎兵衛、喜多八の異国からくにりやう馬にひとしく千里ちさとの外にとゞろきたれば、渠等かれら出所しゆつしよを問ふ人有。よつて今そのおこる所をあらはし、東都とうと

東海道中膝栗毛発端 原文03

鹿島立かしまだち前冊ぜんさつとし、おくればせ曳出ひきいだしたる馬のみゝに風もひかさぬ趣向しゆかうのとつておきたなからおろして如斯かくのごとし

于時文化 甲戌初春 十返舎一九 志