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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文26

▼開

とう/\、今朝がた御臨終(りんじう)なされた。」 北八「そふだろうとも。」 与九「それにつゐて、おかみさまがおつしやるには、きた八に暇(いとま)をくれる、あれは平生(へいぜい)心ざしのみだらなもの。旦那殿(だんなどの)がしなれたら猶の事、女の主(しう)と侮(あな)つて、どのやうな不埒(ふらち)をせまいものでもないから、そう/\請人の所へ引わたしてやれとの事。それはと傍(そば)から、さま/\取成(とりなし)をいつてみたが、どふでもきさまは、かみさまへ、なんぞいやらしい事でもいつたとみへる。そふかして日頃(ひごろ)からいけすかねへ。頬(つら)の皮(かは)の厚(あつ)い男。顔(かほ)を見るもいやだと、

きさまの事をわるくいつて、七里(しちり)潔敗(けつぱい)いやだ/\といつてござるから、しかたがねへ。モシ弥次郎兵衛さまはあなたか。只今(たゞいま)お聞きのとをりでござりますから、きた八どのは是でおわたし申ます。」 弥次「承知いたしました。コレきた八、あのとをりだが、それでいゝか。」 北八「イヤもふ、よくてもわるくてもしかたがねへ。しかし其筈(そのはづ)ではねへつもりだに。」 弥次「くれ/\もいめへましゐ業(ごう)さらしな野郎(やろう)めだ。いつその事、何も角もぶちまけやうか。」 北八「アヽコレ/\誤(あやま)つた。おがむ/\。」 与九「また折(をり)をみて、訴訟(そしやう)のしかたもあろう。なんに