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東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文26

とう/\、今朝がた御臨終りんじうなされた。」 北八「そふだろうとも。」 与九「それにつゐて、おかみさまがおつしやるには、きた八にいとまをくれる、あれは平生へいぜい心ざしのみだらなもの。旦那殿だんなどのがしなれたら猶の事、女のしうあなつて、どのやうな不埒ふらちをせまいものでもないから、そう/\請人の所へ引わたしてやれとの事。それはとそばから、さま/\取成とりなしをいつてみたが、どふでもきさまは、かみさまへ、なんぞいやらしい事でもいつたとみへる。そふかして日頃ひごろからいけすかねへ。つらかはあつい男。かほを見るもいやだと、

きさまの事をわるくいつて、七里しちり潔敗けつぱいいやだ/\といつてござるから、しかたがねへ。モシ弥次郎兵衛さまはあなたか。只今たゞいまお聞きのとをりでござりますから、きた八どのは是でおわたし申ます。」 弥次「承知いたしました。コレきた八、あのとをりだが、それでいゝか。」 北八イヤもふ、よくてもわるくてもしかたがねへ。しかし其筈そのはづではねへつもりだに。」 弥次「くれ/\もいめへましゐごうさらしな野郎やろうめだ。いつその事、何も角もぶちまけやうか。」 北八アヽコレ/\あやまつた。おがむ/\。」 与九「またをりをみて、訴訟そしやうのしかたもあろう。なんに