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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文13

▼開

いたせし所に、いんもふとめは密通(みつつう)の男ならでは添(そは)ないと申。しかれば妹(いんもふと)が首(くび)をきつて、こなたへ持参(ぢさん)仕らふ。それにて御一分(ごいちぶん)をたてられ、御(ご)了簡(りやうけん)頼入(たのみいる)と申遣(つかは)せしに、先方(せんほう)も、諸親類(しよしんるい)はじめ傍輩(ぼうばい)どもへ兼(かね)てこなた妹御(いんもふとご)を妻(さい)に申受(うけ)る筈(はづ)と吹聴(ふいちやう)せし上は、世間体(せけんてい)へ対(たい)し申し訳(わけ)のない仕合。女の首(くび)ひとつ受(うけ)たとて何の役(やく)にもたゝぬこと。此上は其元とうち果(はた)すより外、分別(ふんべつ)なし。 明晩(めうばん)、安倍(あべ)河原(かはら)におゐて、

勝負(しやうぶ)を決(けつ)せずとの返事(へんじ)。元来(もとより)身共も覚悟(かくご)のまへ、いかにもと挨拶(あいさつ)せし所に家老中(からうぢう)より双方(そうほう)をめされ、年来(ねんらい)御主人(しゆじん)の御知行(ちぎやう)を頂戴(てうだい)いたし居ながら、私(わたくし)の宿意(しゆくゐ)をもつて討果(うちはた)さんとは、殿(との)へ対(たい)して第(だい)一不忠(ふちう)。妹が兄(あに)にかくして夫(おつと)を持(もち)しをしらずして、利金太に契約(けいやく)せしを不届(ふとゞき)とはいひがたし。いまだ婚礼(こんれい)もせないうちのこと、互(たがい)に一分(いちぶん)のすたることはないはづ。自今(じこん)以後(いご)、両人遺恨(ゐこん)を棄(すて)て御奉(ごほう)