いたせし所に、いんもふとめは密通の男ならでは添ないと申。しかれば妹が首をきつて、こなたへ持参仕らふ。それにて御一分をたてられ、御了簡頼入と申遣せしに、先方も、諸親類はじめ傍輩どもへ兼てこなた妹御を妻に申受る筈と吹聴せし上は、世間体へ対し申し訳のない仕合。女の首ひとつ受たとて何の役にもたゝぬこと。此上は其元とうち果すより外、分別なし。 明晩、安倍河原におゐて、
勝負を決せずとの返事。元来身共も覚悟のまへ、いかにもと挨拶せし所に家老中より双方をめされ、年来御主人の御知行を頂戴いたし居ながら、私の宿意をもつて討果さんとは、殿へ対して第一不忠。妹が兄にかくして夫を持しをしらずして、利金太に契約せしを不届とはいひがたし。いまだ婚礼もせないうちのこと、互に一分のすたることはないはづ。自今以後、両人遺恨を棄て御奉