お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文10

なる身どもが、いんもふとのおたこ密通みつつうをせられたといふこと、あとにて聞て腹立ふくりうはいたしたれども、たんだひとりのいんもふとがこと、どふしたゑんでかな貴様きさまでなくてはそはぬと申すゆへ、不便ふびんにおもつて堪忍かんにんむねなでて、すいた男にそはせずとおもひきはめ、わざ/\めしつれて参つておざるヤア。此うへからは随分ずいぶんと、いんもふとめを不便ふびんがつてやつて下され。まずいわつて冷酒れいしゆでなりとさかつきをさせずに。サア/\はやく/\。」 おふつヲヤ/\おめへさんは

どなたかはしらねへが、どこのくにゝかめつそうな。想体そうてへ男といふものは、女にあつて二世の三世のと、真実しんじつらしくいひかけてだましてみるは、女をおとすおさだまりの口上。それをまんまことにして、駿河するがからわざ/\其男にそはそふとつて、つれておこしなさるといふは、馬鹿気ばかげきつてゐるじやァござりませんか。又妹御いもふとごも妹御、満足まんぞくな男でもあることか。わたしは仕方しかたなしにそつてはゐますれど、いろくろくて、目が三かくで、口が大きくて