公を大切に勤られよ。また妹おたこことは、仮初にいひ約束せし男の外、他へ縁さつくまじとは寔に貞節のいたりと、殿にも不便に思召れ、下地より馴染たる男に添せよとの御意。有難くお受申て、それより爰まで罷越たる所、さきの男、今女房を持おるゆへ、すご/\と妹をめしつれ帰りましたと、アニハイ兵五左衛門ともいわるゝ侍が、生頬さげてかへられずかヤア。サア妹めを妻にいたせばそのとをり。いやだといへば是非
とも縄をかけて国元へひきつれ、家老中へ此段を披露し、一旦約せし利金太かたへ、おのれをわたさねば、兵五左衛門武士がたゝない。サアせずことがないと諦めて、縄をかゝれ。但しは踏つけてめしとらずかヤア。」 弥次「ハア成程。そふおつしやればきこへましたが、しかしそれはおめへさまのほうの得手勝手。たとひ此身は三枚におろされ、切割れて塩辛にせらるゝとも、我を大切にして艱難辛抱する此女房を捨て、妹御を
しな玉や 御の魚の 抜け潜り
月麿