お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文14

こう大切たいせつつとめられよ。またいもふとおたこことは、かりそめにいひ約束やくそくせし男の外、えんさつくまじとはまこと貞節ていせつのいたりと、殿とのにも不便ふびんに思めされ、したより馴染なじみたる男にそはせよとの御意ぎよゐ有難ありがたくおうけ申て、それより爰まで罷越まかりこしたる所、さきの男、今女房にようぼうもちおるゆへ、すご/\と妹をめしつれかへりましたと、アニハイ兵五左衛門ともいわるゝさぶらひが、生頬なまづらさげてかへられずかヤアサアいんもふとめをさいにいたせばそのとをり。いやだといへば是非ぜひ

ともなはをかけて国元くにもとへひきつれ、家老からう中へ此だん披露ひろうし、一旦いつたんやくせし利金太かたへ、おのれをわたさねば、兵五左衛門武士ぶしがたゝない。サアせずことがないとあきらめて、縄をかゝれ。たゞしはふみつけてめしとらずかヤア。」 弥次ハア成程なるほど。そふおつしやればきこへましたが、しかしそれはおめへさまのほうの得手ゑて勝手かつて。たとひ此身は三まいにおろされ、切割きりきざまれて塩辛しほからにせらるゝとも、われ大切たいせつにして艱難かんなん辛抱しんぼうする此女房にようぼうを捨て、妹御いもふとご

東海道中膝栗毛発端 原文14

しな玉や 御の魚の 抜け潜り
月麿