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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文04

▼開

ちらしあるやうにおもわれ、何(なん)でもひと稼(がせぎ)と心ざして出かけ来るもの、幾千萬(いくせんまん)の数限(かずかぎ)りもなき其中に、生国(しやうごく)は駿州(すんしう)府中(ふちう)、栃面屋(とちめんや)弥治郎兵衛(やじろべい)といふもの、親(おや)の代(だい)より相応(さうおう)の商人(あきんど)にして、百二百の小判(こばん)には何時でも困(こま)らぬほどの身代(しんだい)なりしが、 安部川(あべかは)町の色酒(いろざけ)にはまり、其上(そのうへ)、旅役者(たびやくしや)華水(はなみづ)多羅四郎(たらしろう)が抱(かゝへ)の鼻(はな)之助といへるに打込(うちこみ)、この道(みち)に孝行(かう/\)ものとて、黄金(こがね)の釜(かま)を掘(ほり)いだせし心地(こゝち)して悦(よろこ)び、戯気(たはけ)のありたけを尽(つく)し、はては身代(しんだい)に

まで途方(とほう)もなき穴(あな)を掘明(ほりあけ)て留度(とめど)なく、尻(しり)の仕舞(しまひ)は若衆(わかしゆ)とふたり、尻(しり)に帆(ほ)かけて、府中(ふちう)の町を欠落(かけをち)するとて
  借金(しやくきん)は富士(ふじ)の山ほどあるゆへに
  そこで夜逃(よにげ)を駿河(するが)ものかな
斯(かく)、足久保(あしふぼ)の茶なることを吐(はき)ちらし頓(やが)て江戸にきたり。神田(かんだ)の八丁堀(ぼり)に新道(しんみち)の小借家(こじやく)住居(すまい)し、すこしの貯(たくわへ)あるに任(まか)せ、江戸前の魚(うを)の美味(うまみ)に豊嶋(としま)屋の剣(けん)