お江戸のベストセラー

東海道中膝栗毛発端とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり

原文

東海道中膝栗毛発端 原文08

をとろふものをハヽヽヽヽ。おかみさん、弥次さんはまだかへ。ヲヤ/\うわさをいへばかげがさすと、ソレ旦那だんながおけへりだ。」【ト、ふたりおのがうちへひつこむと弥次郎兵衛かへりて】 弥次エゝこの畜生ちくせうめは、ぐわんにかけておらが所の裏口うらぐちてゐらァ。おふつ、ちやはわいてあるか。」 ふつヲヤおめへ、酒計さけばかりで、おまんまはまだかへ。」 弥次「しれてあることさ、居酒屋ゐざかやへはよつたが居飯屋ゐめしやへはよらなんだ。」 ふつ「そして、喜多八さんの所から、なんでたび/\びにくるのだへ。」 弥次「おれにかねをかしてくれろとつて。」 ふつヲヤばからしゐ、どふしたのだへ。」 弥次「あいつめが

仮宅かりたくへでもはまつたそふで、親方おやかたかねをちつとばかり、つかひこんだといふことだ。其しりがわれると、しくじるはあたりまへだが、こゝでしくじつては理屈りくつのわりいことがあるといふ。なぜだときいたら、あそこの番頭ばんとうめが、此間、疝気せんき天窓あたまへさしこんで、それなりにあたまが、しやつきりとなつてしんだといふことだ。それに親方おやかた年寄としよりくせうつくしゐわかいかみさまをもつて、腎虚じんきよして、もふ、けふかあすかといふくらゐ、これも今にめでたくなるは必定ひつでう。そふ