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東海道中膝栗毛発端(とうかいどうちゅうひざくりげのはじまり)

原文

東海道中膝栗毛発端 原文22

▼開

北八「それは承知(せうち)だが、なぜまたあんな究屈(きうくつ)な所へ、かみさんを入れておゐたのだ。サア/\出なせへ/\。」【ト、はんびつの中から女の手をひつぱりて、ひき出さんとしけるに、おつぼきた八を見て】 おつぼ「ヤアおまへか、嬉(うれ)しや/\。わしが産月(うみづき)を心元(こゝろもと)なさに、こゝまで尋(たづ)ねて来て下さりましたか。」【ト、しがみつくに、きた八はびつくりしたかほ、弥次郎ふしんはれず】 弥次「コリヤ北八、手めへこの女とちかづきか。」 つぼ「ハイわたしは、此きた八さまのござる内に、おまんまたきをいたしておりましたもの。いやだといふを無理(むり)無体(むたい)、きた八さまに口説(くどか)れまして、ツイ逢(あひ)ましてかうした身になりましたゆへ、お隙(ひま)をもらひ

親(おや)もとへかへりましても物堅(ものがた)い親(おや)。うちへは入れず、北八さまのもらひ分にて親の手前を引きとられ、余所(よそ)の内に預(あづけ)られておりましたが、此事親かたさまの耳(みゝ)に入らぬうち、わたしに十五両の金をつけて、外へ片付(かたづけ)たいとの相談。わたしは迚(とて)も斯(かう)なるからは、いつまでもはなれぬ気(き)でゐましたけれど、それではあなたのお為(あめ)になるまいと、得心(とくしん)づくでおもひきり、こゝろにそまぬこゝへ嫁入(よめいり)して来ましたのでござります。」【ト、くるしい中になみだ半分いさいのはなし、弥次郎きもをつぶし】 弥次「ヤア/\そんなら