お江戸のベストセラー

方言修行むだしゅぎょう 金草鞋かねのわらじ江之島鎌倉廻えのしまかまくらめぐり

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浄光明寺・荒居焰魔

浄光明寺じやうくわうめうじ

じやうくわうめうじのけいだいぢおんいんにやひろい
ぢぞうありあみひきぢぞうはこのさんちうに
ありふじはらのためすけのとうそのうしろなり
かげきよつちのらうはけわいざかの山ぎはに
あり

狂歌

あみ引のぢぞうのまへの
ちや屋にきてあとひき
ぢざけのむぞたのしき

「なんでもたびではとほうもなくぜに
をとられることがあるからうつかりとは
のめぬそれともきかうがたのおふる
まひならうつかりとのんでもよい
「なにたびへ出ておふるまひといふことが
あるものかなんでもわりあいさつきに
きこうがのんだあまざけの八もんは
おれがだしておいたからよこしなさい
「きこうきたないことをいふそういふと
きのふわたしせんのニもんよこ
さつし/\
「イヤ/\あれはゆきのしたの
たんこのせに四文さしひくと
そつちから二もんつりを
とらねばならぬたつたいま
かんちやうさつしそれ/\
女がきたエヘン/\

「もふ
いち
ごう
やりた
いが
いつそ
のこと
ひと
てうし/\

荒居焰魔あらゐゑんま

それよりひめがやつあらいのゑんま
くちにおさなこのつけひもをくわへ
あるはいわれあることなるべしかい
ぞうじほんぞんなきやくしといふ
むかしこの山中にてまいよこどもの
なくこゑありそのちをほりてこの
やくしをえたりこのもんせんにそこ
ぬけの井といふあり

狂歌

たうとさはたぐひあらゐの
ゑんまどうまいらぬ人も
      なきやくしなり

「もし/\かみさんあらゐの
ゑんまさまは
これかのゑんま
さまはおやどに
ごさりま
すかへ
「今おくに
うたゝねを
してござり
ましたあそこへ
いつてわに
ぐちをおたゝき
なさるとじき
におめを

おさましなさりますゑんまさまは
とかくわにぐちがおすきでわたしの
わにぐちを
たゝいて
みたいと
いつそわたし
をおはなしな
さいませぬ
から

まへ
さまは
そうづ
川のばァ
さまといふ
おめかけ
さまがあるからその
わにぐちをおたゝき
なされといいまし
たらいやもふ
あのばゞのは
わにぐち
ではないもく
ぎよのやうに
ぼく/\していか
ぬとおつ
しやりました