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長寿寺・明月院
宝亀山長寿寺▲は亀ヶ谷にある。足利基氏公の建立で、むかしは、たいそうな伽藍の大寺だった。浄智寺▲は、鎌倉五山の四番目である。開山は宋の仏源禅師、開基は北条師時。
その向かいに明月院▲という寺があり、上杉憲方が建立した。
この上の山を六国見という。ここからは、安房、上総、武蔵、下総、相模、伊豆の六国が一目で見わたせる。
狂歌
けいだいの きれいさほうき ざんなれば
ばくばかりなる 堂のほりもの
境内のきれいさ宝亀(箒)山なれば
獏(掃く)ばかりなる堂の彫り物
旅人Ⓐ「上方の宿屋には五右衛門風呂というのがあって、たいがい底板が浮いてるから、ウッカリそれを取りのけて入ってしまって釜でヤケドをする。昨夜の宿もその風呂で困りはてた。」
旅人Ⓑ「わしはまた田舎へ行ったとき、風呂へ入ったところが、あんまりぬるいから、
『これこれ、ちっと湯を焚いてくだされ。』
と言うと、宿の男が、
『かしこまりました。』
と、ワラで編んだ大きなおひつのフタのようなものを持ってきて、湯に入っているわしの頭の上からかぶせようとする。
『これは、どうするのだ?』
と聞くと、
『風呂にフタをして焚きます。』
と言う。
『待ってください。そのフタを頭からかぶせられて火を焚かれたら、ゆで殺されてしまう!』
と、わしがあわてていると、
『いやいや、このフタの穴から首を出しておいでなさい。』
と言うから、よくよく見れば、そのフタの真ん中に首を出すほどの穴が開いていて、身体はよい風呂に入っていながら、フタの穴から首ばかり出している。そのおかしさ、
『さらし首のようだ。』
と大笑いしたが、旅をするといろんなことがあるものでござります。」
子ども「獅子舞が来た。ししの十二文で舞ってください。」
旅人Ⓒ「江戸へ行ったら、京橋の仙女香を買ってきてくれと隣りの娘に頼まれたから、買ってこなきゃ。」