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杉本観音
金沢から再び鎌倉へもどる道に、足利基氏の屋敷跡▲がある。その右の方には杉本観音▲があり、大蔵山という。坂東巡礼第一番の札所である。
この脇を流れる滑川▲には、青砥左衛門が銭を落としたという伝説が残る。
また、杉本観音の東には浄妙寺▲があり鎌倉五山の一つで禅宗の大寺である。稲荷山という。ここに足利直義の木像がある。
狂歌
富ならで 第一ばんの すぎもとは
あたり札所の くわんおんにこそ
富ならで第一番の杉本は
当たり札所の観音にこそ
旅人「わしはこのあいだ妻子と死に別れ、気を落として、いっそのこと坊主になろうと思い頭を半分剃りかけたが、いやいや、坊主にならずとも、このままで西国巡礼でもしようと思い立って出かけました。すると妙なことに、とかく毎日気をつけてみたが、昼前はすることなすこと運がよく、昼過ぎからはどうも運気が悪いのはどうしたことだと、よくよく考えてみたらそのワケがある。
わしの頭が、右の鬢先から剃り落として半分坊主になってやめたものだから、半分白くて半分黒く六曜のうちの先勝というものになったからのことさ。なんとも、もっともなことじゃないかえ。」
旅人②「向こうへ行く年増の尻つきが、ムッチリとして、どうもあんばいがよさそうだ。どうぞ、この巡礼にご報謝してくださるまいか。」