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佐助稲荷・岩屋堂
それから佐々目ヶ谷を抜けて今小路▲を行くと、左に天狗堂、右の方には巽の荒神▲がある。さらに進んで勝ノ橋▲を渡ると、左の方には佐助稲荷の宮▲、右の方へ行けば岩屋堂▲、松源寺、そして浄光明寺▲にいたる。浄光明寺は、たいそうな大寺で境内が広く見どころも多い。
狂歌
名どころは きびつの鉄に あらねども
なりひゞきたる かまくらのさと
名所は吉備津の鉄にあらねども
鳴り響きたる釜くらの里
旅人Ⓐ「わしは、このようにみすぼらしい姿をしていますが、これでも仇討ちでござる。わしのかかあを同僚の男が連れて逃げたから、その女敵を討たねば国へは帰られぬ。それで、このように身をやつして歩いています。
敵の男は、わしよりよっぽど強い男だから、万一めぐり逢ってわしが返り討ちになってはたまらないので、どうぞ逢いませんようにと、敵は西にいると聞いたから、わしは、わざと東を訪ねて歩き、それでも…どうも心配で…ひょっとして…どういうことで…その敵に逢ったりしないかと不安でしたが、昨日、国の者に会って聞いたら、その男はこのごろ遠くの四日市へ引っ越したらしい。それを聞いて、ようやく心が落ち着きました。」
旅人Ⓑ「そんなら、その男ばかりが四日市へ引っ越して、女はきっと東海道の岡崎にいるな。なぜといえば、きさま、めがたき討ちなら岡崎の女郎に決まってる。
『めがたき女郎衆は、よい女郎衆♪』
と言うからな。」
旅人Ⓒ「これはよい日当たりだ、わしもここで日向ぼっこしながらシラミとりをいたそう。」