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松葉ヶ谷安国論寺
松葉ヶ谷安国論寺▲は、日蓮上人が房州からやって来て、ここにこもり立正安国論を著したところである。境内には妙法桜という銘木がある。
佐竹屋敷▲は、名越道にむかしあった佐竹四郎秀義の旧跡である。
日蓮乞水▲やお猿畠▲も、みなこの名越坂のあたりにある。
狂歌
ぢゝばゝの まいりおほきは
たかさごの まつはかやつの そしどうにこそ
爺婆の参り多きは
高砂の松はか谷(松葉ヶ谷)の祖師堂にこそ
参詣「日蓮さまが、このお寺で『安国論』という書物をお書きなさったということだが、わしのほっぺたにできた『たんこぶろん』は何をしても治らぬので、『あんこくろん』をお書きなされた祖師さまなら『たんこぶろん』もご存知であろう、どうぞ治りますようにとおたのみ申したら、その晩にたんこぶは治ったが、こんどは金玉へたんこぶができて金玉が増えたから、金の増えるのはめでたい、これもご利益であろうと、お礼に参りました。」
補陀洛寺
長勝寺▲は名越坂の西にある。ここから海の方に、天照山の社▲、補陀洛寺の観音▲があり、さらに先には三浦道寸の城跡▲がある。
狂歌
此けしき あかず三うらの しろあとや
うてうてんせうさんの ながめに
この景色飽かず三浦の城跡や
有頂天照山の眺めに
旦那「わしは、きさまも知るとおり酒が好きだから、酒屋を見るたびに酒が飲みたくてたまらなくなるが、俺一人で飲むわけにもいかず、きさまにも飲ませるから、きさまの分だけ余計に銭がかかる。わしもこらえて飲みたいのを辛抱しているが、きさま、帰るまで酒をやめてくれんか、どうだ、どうだ。」
従者「これは旦那さま、殺生なことを。わたくし、酒は飯より好きでこざります。命にかえてもやめられません! そのお考えなら、いっそのことわたしを殺してください。しかし、殺される前にまず一杯いただきます。一杯飲んで殺されるなら、それは本望。ただし、死んでも生きかわり死にかわり幽霊になって後引きに現れます。」