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巨福山興国建長寺
巨福山興国建長寺▲は、鎌倉五山第一位の禅寺である。本尊は、済田地蔵尊で応行の作と伝わる。
むかし、この場所は地獄谷と呼ばれる処刑場だった。北条時頼のときに、地蔵菩薩を篤く信仰していた咎人の済田という者が、まさに処刑される寸前に首にかけていた地蔵の霊験で救われたという。この地蔵を本尊として建長寺が建立された。たいそうな大寺で境内の見どころも多い。
狂歌
くさなぎの けんてうじとや けいだいを
はらひきよめて ちりひとつなし
草薙の剣(建)長寺とや境内を
払(祓)い清めて塵ひとつなし
参詣Ⓐ「世間のたとえにも、綺麗に掃きちぎったことを『建長寺のようだ』といいますが、それに引きかえ、うちのかかあのムサくるしさには困ります。何をするにもダラしなく、しまいには、お歯黒をつけたこともない口からネズミ色のヨダレを垂らして、掃除もせずに汚いから、わしがときどき掃除をしてやります。しかし、わしがこんなに長く旅に出ているので、さぞかし汚れているだろうから、早く帰って掃除をしてやろうと思えば、それが楽しみでござります。」
参詣Ⓑ「イヤ、おまえはそう思っていても、おまえの留守中に、かみさまが誰かよい箒をこしらえて掃除してしまうかも知れぬぞえ。」
参詣Ⓐ「そう、そう、そうかも知れません。『なまけ者の節句働き』ということもありますから、そうならないうちに、わたしはこの節句前にはぜひ帰ろうと思います。」