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巨福山興国建長寺

巨福山興国建長寺こふくざんこうこくけんてうじ

こふくさんこうこく
けんてうじはかま
くら五山の一ばん
めなりほんぞんは
さいだぢぞうそん
なりおうぎやうの
さくいにしへは
このところをぢごく
だにとてとがにんを
けいばつせしところ
なりときよりのとき
とがにんさいたといふ
ものつねにぢぞう
ぼさつをしんこうし
けるがきられんとせし
ときまもりにかけたる
ぢぞうのりせうありて
たすかりたりこのぢぞうを
ほんぞんとしてこのてらこん
りうありしなりいたつて
たいちにてけいだい見どころ
おほし

狂歌

くさなぎの
けんてうじとや
けいだいを
はらひきよめて
ちりひとつなし

「せけんのたとへにもきれいに
はきちぎつたことをけんてうじ
のやうだといひますがそれに
ひきかへてわたしのうちのかゝあ
めがぢゝむさいにはこまります
なんでもいきなりでついに
おはぐろをつけたこともないくち
からねづみいろのよだれをたらして
どこもかしこもふそうぢできたない
からとき/\わしがそうぢしてやり
ますがこんなにひさしくたびへ出て
ゐるからそうぢしてやる人がなくて
さぞかしよごれてゐるであらう
はやくかへつてそうぢをしてやらうと
思へばそれがたのしみでござります
「イヤおまへこそさふ思つてゐなさらうが
おまへのるすにかみさまがだれぞよい
ほうきをこしらへてそうぢをして
もらはふもしれぬぞへ
「さやう/\それもしれませぬものぐさものゝ
せつくばたらきといふことがあるから

そんな
事のない
うちに
わたしは
このせつく
まへには
ぜひ
かへらうと
ぞんじ
ます