金沢・能見堂
①
かなざわはむつらのせうのうちにして
せとばしよりひがしをいふこのちふうりう
のところにしてハけいのながめいふばかり
なしここにきんたくさんせうめうじといふ
しんごんしうの大てらありかなざは
ぶんこのあとはとうじのけいだいあみだ
いんのうしろにありあをばのかへで
さいこのうめふげんぞうのさくら
みなけいだいのめいぶつなりのうけん
どうはせうめうじのにしきたに
ありてぢぞういんといふこせの
かなおかゞふですてまつありこのち
よりかなざはハけいひとめに見ゆるなり
狂歌
ふうけいはのうけん
どうにふで
すてしまつしまにさへ
おとらざりけり
②
「なるほどよいけしきだわしが
まへかたあきのみやじまへいつて
やどやのにかいにひとり
てうどこのやうにけしきを
ながめてさけをのんでゐると
やどの女ぼう年ごろ二十
四五でうつくしいやつが
十二三ばかりになるむす
めをつれてきていふには
あなたはさきほど
うちのおなごにさみ
せんのいとをかひにつかは
されましたがさみせん
をおひきなさるでござ
りませうわたくしもすき
でござりますなんぞ
ひいておきかせなされて
くださりませといふその
あいきやうはこぼるゝばかり
こゝでおれがさみせんをひくと
おもしろからうけれどせうとく
こつちはさみせんはしらぬものだ
からいろ/\ことわりをいつてもきかず
なにごぞんしのないことがござり
ませうさみせんのいとをかひに
つかはされたからはぜひともおねがひ
申しますといふこんなこまつた事は
ないなるほど女をたのんでさみせん
いとをかひにやつたはわしがいればを
つないだいとがきれたからそのいれ
ばをつなぐいとにするのだものをまさか
いろけもなくそうもいわれずあのいとは
わきざしがさやばしるからそのとめにこよりでは
③
きれるから
あのいとで
こいくちをしばつ
たのさといふと
そこにゐるむすめ
つこがなに
わしがさつき
見たらあの
おきやくさまが
あのいとでいれ
ばをつないで
ござつたと
このむすめに
だいざごくわう
ぶちまけられて
わしはそのかみ
さまのてまへ
まことにめんぼく
なくてわしが
さふらひならば
はらでもきら
ねばならぬ
ところでござ
りました