離山
①
かまくらのめい
しよこせき
一けんすみて
それよりかへ
りみちはとう
かいどうの
とつかの
しゆくに
いたるにかま
くらより
二りなり
かまくらを
いでゝはなれ
山といふ
たてば
あり
これより
とつかへ一り
狂歌
旅笠の
ちら/\しろく
木のまより
見ゆるは
春の
はなれ
山みち
②
「はい/\/\それあぶない
むまだ/\のつている
おいらもやつはり
むまだからかたよれ/\
「イヤこのおさふらひさまは
のつてゐるおれもむまだと
いひなさつたがあのおひとは
むまわしはたぬきだ
なぜといふにわしはきん
たまが大きいものだから
わしのあだなをたぬきと
いふことをこのまへおぢとう
さまがおきゝなされて
とのさまがわたしを
めされてこれ/\そのほうは
たぬきそうなはらづゝみをうてと
おつしやるからいやとも
いはれすしかたなしに
はらをあけてたゝいて
おめにかけたら
さてもよるなるはらだ
そのはらがほしい
おれにくれろと
おつしやるから
③
これは
あげられ
ませぬ
わたしの
からだへ
つくりつけに
いたしてござり
ますから
はなされませぬ
といふといや/\
はなしてとらうとは
いはぬおれが
もらつてそのほうへ
あづけておくが
それがしやうちなら
もはやそのほうのはらでは
ないぞさふらひと
④
いふものはいつ
なんどきとの
やうなことがある
まいものでも
ないからはらも
かけがへがなく
てはならぬ
そのかけがへの
はらにするのだと
⑤
おつ
しやるから
こいつこき
みのわるい
ことゝ思ひながら
ごふちをくださる
ことだからおうけ
申しておきまし
たが此せつ
きけばおぢ
とうさまに
なにかまち
かひがあつたと
いふことさあ
しまつた
かけかへのはらを
きられては
たま
ら
ぬと
わしは
そのまゝ
かけおちして
このやうに
あてなしの
たひへでかけ
ました
あとては大かた
はらかなく
なつたとて
わしはてべそで
こさるからでべそを
しやうこにはらのせんぎが
きひしからうとおもひ
ますからめつたに
へそをたしてはある
かれ
ませ
ぬ