お江戸のベストセラー

方言修行むだしゅぎょう 金草鞋かねのわらじ江之島鎌倉廻えのしまかまくらめぐり

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離山

離山はなれやま

かまくらのめい
しよこせき
一けんすみて
それよりかへ
りみちはとう
かいどうの
とつかの
しゆくに
いたるにかま
くらより
二りなり
かまくらを
いでゝはなれ
山といふ
たてば
あり
これより
とつかへ一り

狂歌

旅笠の
ちら/\しろく
木のまより
見ゆるは
はる
はなれ
山みち

「はい/\/\それあぶない
むまだ/\のつている
おいらもやつはり
むまだからかたよれ/\
「イヤこのおさふらひさまは
のつてゐるおれもむまだと
いひなさつたがあのおひとは
むまわしはたぬきだ
なぜといふにわしはきん
たまが大きいものだから
わしのあだなをたぬきと
いふことをこのまへおぢとう
さまがおきゝなされて
とのさまがわたしを
めされてこれ/\そのほうは
たぬきそうなはらづゝみをうてと
おつしやるからいやとも
いはれすしかたなしに
はらをあけてたゝいて
おめにかけたら
さてもよるなるはらだ
そのはらがほしい
おれにくれろと
おつしやるから

これは
あげられ
ませぬ
わたしの
からだへ
つくりつけに
いたしてござり
ますから
はなされませぬ
といふといや/\
はなしてとらうとは
いはぬおれが
もらつてそのほうへ
あづけておくが
それがしやうちなら
もはやそのほうのはらでは
ないぞさふらひと

いふものはいつ
なんどきとの
やうなことがある
まいものでも
ないからはらも
かけがへがなく
てはならぬ
そのかけがへの
はらにするのだと

おつ
しやるから
こいつこき
みのわるい
ことゝ思ひながら
ごふちをくださる
ことだからおうけ
申しておきまし
たが此せつ
きけばおぢ
とうさまに
なにかまち
かひがあつたと
いふことさあ
しまつた
かけかへのはらを
きられては
たま

ぬと
わしは
そのまゝ
かけおちして
このやうに
あてなしの
たひへでかけ
ました
あとては大かた
はらかなく
なつたとて
わしはてべそで
こさるからでべそを
しやうこにはらのせんぎが
きひしからうとおもひ
ますからめつたに
へそをたしてはある
かれ
ませ