丸山稲荷
①
十二いんはつるがおかの
にしのかたにありしや
そうなりいにしへは
二十五いんありしとなり
このうちしやうごんいんの
うしろの山をさんきよほう
といふさんていありこのとこ
ろより見わたし
ふうけいいたってよしこの
あたりにまるやまいなりの
みやありこれも
けいちなり
狂歌
みな人へ
りせうを
てらし給ふ
とて
月のまる山
いなり
たうとき
②
「わしははらがへつてこたへられぬがちう
じきのにぎりめしをさつきどこへかおとして
しまつたひもじくてならぬなんときさまの
にぎりめしをおれにひとつくれぬかなにもふ
みなくつてしまつてないといふかうそをつくの
きさまはしわいおとこたまだあることをおれが
③
しつてゐるから
いふのだいよ/\
ないかなくは
しかたがないから
おれか
④
かく
して
あるのを
出してくひ
ませう
ひとのはらの
へつたのは
こら
へ
られ
る
ものだが
わがはらの
へつたのは
どうも
こらへ
られぬ
新宮六本杉
⑤
しんぐうのやしろはほうちうがゝくいんのやしろより
ひだりのかたへ二丁ばかりにありいまみやといふ
やしろのうしろはたにふかく一ほんのふるき
すぎあり大ぼくにしてねもとより
六ほんにわかれそのたかきこと
十よじやうわたり三尺のらう
ぼくなり
狂歌
見とれては
うてうてんぐの
すみかともしらずに
杉の古木なが
むる
⑥
「この六ほんすぎ
にはてんぐがすんで
ゐるときいたがなる
ほど見なさいあれ/\
てんぐのひよこが
見へるしかしとんびか
しらぬてんぐに
してははなが
ひくいやうだ
「それはまだ
こどもだからの
ことさだん/\
せいじんする
にしたがつて
⑦
あのはなも
大きくなるで
あらうてうど
わしがはなも
はじめは
とう
がらしの
やうで
あつたが
だん/\とそれが
さつまいものやうに
なつてのちにはねりま
大こんのやうになつたが
今ではまたしわがよつて
ほしだいこんのやうに
なつたからはじまらない