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方言修行むだしゅぎょう 金草鞋かねのわらじ江之島鎌倉廻えのしまかまくらめぐり

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杉个谷・小袋坂

杉个谷すぎがやつ小袋坂こぶくろざか

くわんれいのやしきあといまはでんはたとなり
そのかたちのこれりすぎがやつべんざい
てんのみやそのひがしにありここに
はいかいしばいおうのひありこの
へんのやまのうちこぶくろざかの
うへなりからだせんといふは
こぶくろざかにあり

狂歌

ゑんめいのこぶくろざかはかまくらへ
たから入こむめい所けんぶつ

たび人
「わしはきのふどうした
事かにわかにあんばいが
わるくなつてどうも
あるかれませぬから
あきんどのみせさきを
かりてやすんでゐたが
しきりにきがとほくなつて
めをまはしましたがなにか
ひいやりとのどへとほつたと
おぼへてきがついてみまし
たらわたしのそばにうつくしい
かみさまがいてさてはおまへ
きがつきましたかいろ/\しても
いかぬゆへこれはいとしいこと
どふぞせうきにしてあげたいと
水をひとつわたしがふくんでおまへを
わたしのひざのうへゝだきあげて
くちうつしに水をあげ
ましたらおきがつき
ましたといふからその
かみさまをみるにいろが
ゆきのやうにしろくて
めつきがよくてくち
もとがかはゆらしく
にこ/\とわらふ
そのあいけうの
よさわしは
くびすぢもと
からぞつとして
さても/\この
やうなべんてん
さまのやうな
うつくしい
女ちうの
くちから
わしがこの
いれば
をしたくち
へくちうつし
とは

ありがたい
もつたい
ないとあん
まりうれしさ
うてう
てんに
なつて
とり
のぼせ
また
めを
ひき
つけまし
たらこん
どはくち
うつしでも
ゆくまい

きうをすへるが
よいとてふくろもぐ
さをひとつかみ
はらへすへられま
して
きは
つき
ましたが
これ
御らうじ




きうのあとが
このとほりに
くづれて
もう/\
ひり/\といたみ
ましてゆふべも
よつひて
ふせりま
せぬ
たれ
でも
あるくとおまへ
がたもこのうへ
ひよつとどういふ
ことであそこのかど
さきでめをまはす
まいものでもない
からそのときゝうは
すへてくださるなと
さきへことわつて
おいてからめを
まわし

さるが
いゝ
わしは
とんだめに
あい
ました