杉个谷・小袋坂
①
くわんれいのやしきあといまはでんはたとなり
そのかたちのこれりすぎがやつべんざい
てんのみやそのひがしにありここに
はいかいしばいおうのひありこの
へんのやまのうちこぶくろざかの
うへなりからだせんといふは
こぶくろざかにあり
狂歌
ゑんめいのこぶくろざかはかまくらへ
たから入こむめい所けんぶつ
②
たび人
「わしはきのふどうした
事かにわかにあんばいが
わるくなつてどうも
あるかれませぬから
あきんどのみせさきを
かりてやすんでゐたが
しきりにきがとほくなつて
めをまはしましたがなにか
ひいやりとのどへとほつたと
おぼへてきがついてみまし
たらわたしのそばにうつくしい
かみさまがいてさてはおまへ
きがつきましたかいろ/\しても
いかぬゆへこれはいとしいこと
どふぞせうきにしてあげたいと
水をひとつわたしがふくんでおまへを
わたしのひざのうへゝだきあげて
くちうつしに水をあげ
ましたらおきがつき
ましたといふからその
かみさまをみるにいろが
ゆきのやうにしろくて
めつきがよくてくち
もとがかはゆらしく
にこ/\とわらふ
そのあいけうの
よさわしは
くびすぢもと
からぞつとして
さても/\この
やうなべんてん
さまのやうな
うつくしい
女ちうの
くちから
わしがこの
いれば
をしたくち
へくちうつし
とは
③
ありがたい
もつたい
ないとあん
まりうれしさ
うてう
てんに
なつて
とり
のぼせ
また
めを
ひき
つけまし
たらこん
どはくち
うつしでも
ゆくまい
④
きうをすへるが
よいとてふくろもぐ
さをひとつかみ
はらへすへられま
して
きは
つき
ましたが
これ
御らうじ
ま
せ
そ
の
きうのあとが
このとほりに
くづれて
もう/\
ひり/\といたみ
ましてゆふべも
よつひて
ふせりま
せぬ
たれ
でも
あるくとおまへ
がたもこのうへ
ひよつとどういふ
ことであそこのかど
さきでめをまはす
まいものでもない
からそのときゝうは
すへてくださるなと
さきへことわつて
おいてからめを
まわし
な
さるが
いゝ
わしは
とんだめに
あい
ました