松个岡・甘露井
①
とうけいじはまつがおかといふゑんがくじのみなみにあり
ぜんしうにてあまでらなりかいきはほうじやうときむねの
つまあきたじやうのすけのむすめにして
てうおんいんがくさんしだうぜんにと
いふだい二十世のじうしよくはとよとみ
ひでよりこうのそくぢよなり
ぶつでんのうしろにそのせき
とうばありかんろの井もこの
へんなりかまくら十井のうち
のそのひとつなり
狂歌
常盤なる松が
おかとてあぢ
はへば
ちとせを
のぶる甘露井
もあり
②
たび人
「これはうつくしい
おびくにだぼう
さまにしておくはおしい
ものだ
「このまへわしがおうしうへ
いつたときあるはたごや
でめしもりをかをふと
いつたらこゝにはめしもりは
ござりませぬびくに
がありますよんで
御らうじませぬか
といふ
から
こいつは
めづらしい
はなしの
たねだ
かつてみやう
とよびに
やつてみたと
ころがくろい
づきんをかぶつ
てつまらない
かほつきのびく
におつとめは
いくらだときい
たらおふせは
三びやくだ
といふもめん
のせんたく
ものをき
てゐる
ものを
三百
③
とはあたじけないと思ひながらねて
みたところがどうもぼうずくさくていや
だからすぐにねたふりをしてゐると
そのびくにがそつとわしがはなへ
てをあてゝねいきをかんがへるから
こいつきみの
わるいおかしな
ことをすると
思ひながら
いよ/\ねた
ふりして
ゐたら
やがてそのびくにが
そつとおきてあと
さきを見まわし
づきんをとつてりやう
手であたまをごし/\
とかいたがそのあたま
がいがぐりあた
まで
さて
は
いままで
あ
た
まの
かゆいのを
こらへてゐたのか
とおかしくそれなりで
ねてしまつたがあくる
あさそこをたつて
さきのたてばのちややで
きいたらあのしゆくの
びくにはむぎ一せう
づゝでうりますと
いつたものを
三びやくとら
れて
とんだめ
に
あつた
ことが
あつたから
わしは
びくにには
こりはてた
ものさ