お江戸のベストセラー

方言修行(むだしゅぎょう) 金草鞋(かねのわらじ)江之島鎌倉廻(えのしまかまくらめぐり)

2

腰越・星の井・初瀬観音

▼開

腰越(こしごへ)

①

ゑのしまをいでゝこしごへの
りやしまちをうちすぎ
て七りのはまつたひ
むかふにあわかづさの
やま/\を見わたしけしき
よしされどもすなみち
にてなんぎなり此あいだ
うしにのりてよしこのなか
ほどにゆきあい川と
いふありにちれん上人
御なんぎのときかまくらの
つかひとけんしよりのつかひと
ゆきあひしところなりとふ

狂歌

たいくつさあともどりする
すなみちをのりたるうしの
      よだれだら/\

②

「なんとこぞうこのなかでおれが一ばんよい
おとこだらうこのへんにもおれがやうな
よいおとこはあるまいどうだ/\
「おまへまづぜにをくれさつしやい
ぜにをくれたらほめてやりませう
ひよつとさきへほめてぜにをくださらぬと
そんだからぜにからさきへくれさつしやい
「こいつぢよさいのないこぞうめだ
こつちもそのとほりさきへぜにをやつて
ひよつとほめてくれないとこつちの

③

そんだからさき
ぜにはごめんだ

④

「そんならくれ
ずとおかつしやい
もらつた所が
どふもほめ
ようの
ない
かおだ
から
わしも
もらはぬ
ほうが
きが
らくで
よふ
ござるよ

星(ほし)の井(ゐ)・初瀬観音(はせくはんおん)

⑤

はまべよりかまくらみち
いるところにちややあり
こゝにてかまくらのゑづ
をいだしこうしやくして
これをあきなふよこて
はらにちれん上人の
けさかけまつありそれ
よりこくうぞうどう
ほしのゐむらたてば
ちややおほしこれより
はせのくわんおんあり
かいくわうさんといふ
ばんどうじゆんれい四
ばんのふだ所なり

狂歌

煮(にへ)かへりあせふく
       ばかり
めしをたくかまくら
みちの
夏(なつ)の旅人(たびゞと)

⑥

たび人
「ヲヤこのばあさまはだれ
もきかうといひもせぬ
のにこのゑづのこうしやく
をしてそのだいを十二もん
とるのかよし/\こなたのいつた
とほりわしがよくおほへたから
こなたへわしがまたこうしやくして
きかせやうからその十二文こつちへかへしなさい

⑦

「そんなら
おまへ
よく
おぼへ
さし
つた
なら
てふ
ど
よい

⑧

むかふにやすん
でござるおかたへ
おまへこう
しやく
を
してあげて
くれな
さい
その
ぜにはこつちへとつ
てそれでてうと
よふござろう

⑨

「ばあ
さま
こゝの
うちに
むすめは
ないか
あるなら
だして
見せな
さい
ばあ
さまと
むす
めでは
ちや
だいの
おきやうが
ちがい
ます