腰越
①
ゑのしまをいでゝこしごへの
りやしまちをうちすぎ
て七りのはまつたひ
むかふにあわかづさの
やま/\を見わたしけしき
よしされどもすなみち
にてなんぎなり此あいだ
うしにのりてよしこのなか
ほどにゆきあい川と
いふありにちれん上人
御なんぎのときかまくらの
つかひとけんしよりのつかひと
ゆきあひしところなりとふ
狂歌
たいくつさあともどりする
すなみちをのりたるうしの
よだれだら/\
②
「なんとこぞうこのなかでおれが一ばんよい
おとこだらうこのへんにもおれがやうな
よいおとこはあるまいどうだ/\
「おまへまづぜにをくれさつしやい
ぜにをくれたらほめてやりませう
ひよつとさきへほめてぜにをくださらぬと
そんだからぜにからさきへくれさつしやい
「こいつぢよさいのないこぞうめだ
こつちもそのとほりさきへぜにをやつて
ひよつとほめてくれないとこつちの
③
そんだからさき
ぜにはごめんだ
④
「そんならくれ
ずとおかつしやい
もらつた所が
どふもほめ
ようの
ない
かおだ
から
わしも
もらはぬ
ほうが
きが
らくで
よふ
ござるよ
星の井・初瀬観音
⑤
はまべよりかまくらみち
いるところにちややあり
こゝにてかまくらのゑづ
をいだしこうしやくして
これをあきなふよこて
はらにちれん上人の
けさかけまつありそれ
よりこくうぞうどう
ほしのゐむらたてば
ちややおほしこれより
はせのくわんおんあり
かいくわうさんといふ
ばんどうじゆんれい四
ばんのふだ所なり
狂歌
煮かへりあせふく
ばかり
めしをたくかまくら
みちの
夏の旅人
⑥
たび人
「ヲヤこのばあさまはだれ
もきかうといひもせぬ
のにこのゑづのこうしやく
をしてそのだいを十二もん
とるのかよし/\こなたのいつた
とほりわしがよくおほへたから
こなたへわしがまたこうしやくして
きかせやうからその十二文こつちへかへしなさい
⑦
「そんなら
おまへ
よく
おぼへ
さし
つた
なら
てふ
ど
よい
⑧
むかふにやすん
でござるおかたへ
おまへこう
しやく
を
してあげて
くれな
さい
その
ぜにはこつちへとつ
てそれでてうと
よふござろう
⑨
「ばあ
さま
こゝの
うちに
むすめは
ないか
あるなら
だして
見せな
さい
ばあ
さまと
むす
めでは
ちや
だいの
おきやうが
ちがい
ます