此者共に申付、急に召捕差上て宸襟をやすめ奉んと、事もなげに勅答あれば、大王怡悦まし/\て、然ば菊之丞が来迄は奥の殿に引籠、 天人どもに三味弦弾せてなぐさまん。此砌に罪人どもが見へたりとも、大抵軽は追返し、重きやつは先六道の辻の溜へ打込で置べし。また最前の坊主め菊之丞に身を打し事、初は憎しと思ひしが朕が心にくらふれば、若い者の有そふな事なれば、再娑婆へ返べし。しかし此後菊之丞買ことは法度たるべし。弁蔵、松助、菊次なんどを初として
其外、湯島、神明に至るまで、外の者は免許なるぞと勅定ありて御簾さつとおりければ、龍王は水府に帰り、皆々退出したりける。
根南志草一之巻終