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根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻16

この者共ものども申付まをしつけきふ召捕めしとり差上さしあげ宸襟しんきんをやすめたてまつらんと、こともなげに勅答ちよくとうあれば、大王だいわう怡悦いゑつまし/\て、しから菊之丞きくのぜう来迄くるまでおく殿との引籠ひきこもり天人てんにんどもに三味弦さみせんひかせてなぐさまん。このみぎり罪人ざいにんどもがへたりとも、大抵たいていかるき追返おひかへし、おもきやつはまづ六道ろくだうつじため打込うちこんおくべし。また最前さいぜん坊主ばうず菊之丞きくのぜううちことはじめにくしとおもひしがちんこゝろにくらふれば、わかものありそふなことなれば、ふたゝび娑婆しやばかへすべし。しかし此後このゝち菊之丞きくのぜうかふことは法度はつとたるべし。弁蔵べんぞう松助まつすけ菊次きくじなんどをはじめとして

其外そのほか湯島ゆしま神明しんめいいたるまで、ほかもの免許めんきよなるぞと勅定ちよくぢやうありて御簾ぎよれんさつとおりければ、龍王りうわう水府すゐふかへり、皆々みな/\退出たいしゆつしたりける。

根南志草ねなしぐさ一之巻いちのまきおはり