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根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻14

十王じふわう方便てだてつき、もはや我々われ/\知恵ちゑ中橋なかはしなれは、此上このうへ修羅道しゆらだう使つかひたて太公望たいこうばう孔明こうめい韓信かんしん張良ちやうりやう孫子そんし呉子ごし武則たけのり義経よしつね正成まさしげ道鬼だうきたぐゐ軍師ぐんしどもをめされ、御評議ごへうぎしかるべしと申上まをしあぐれば、末座ばつざより、色至いろいたつあかくまなこひかりかゞみのごとく、くちみゝのきわまできれて、首有くびありかたちなきものいづるとれば、ひと一生いつしやうこと見届みとゞけてうしる横目役よこめやくいへものなり。閻王ゑんわうまへにすゝみいで、かた/\の御評議ごへうぎ御尤ごもつともには候得さむらへども、是式これしきこと修羅道しゆらだうひとつかはし、軍師ぐんしどもをめされんことは

此界このかい恥辱ちぢよくといふべし。其上そのうへ彼等かれら智謀ちばう計畧けいりやくにて、此方このはう智恵ちゑすかされなば、いかなるはかりごとをなして、小夜嵐さよあらし騒動そうどう以後いご太平たいへい地獄界ぢごくかいふたゝび乱世らんせいとなるならば、かみ閻王ゑんわうよりしも獄卒ごくそついたるまでの難義なんぎなれば、軍者ぐんしや御招おんまねき御無用ごむようたるべし。わたくしひとのかたにて、善悪ぜんあくたゞす役目やくめなれば、人々ひと/\こゝろおもことをも明白めいはくこれれり。菊之丞きくのぜうはじめとして、其外そのほか役者やくしやども船遊ふなあそびいづべききざし有事あることかねてよりそんたり。 此虚このきよのつはかり給はゞ、やわか御手おんていらざらん