殺ことは成がたし。小文才のある医者は、人を殺が商売なれば、一ぷくにても験あるべしと申上れば、閻王、暫御思案あり、イヤ/\近年の医者どもは切つぎ普請の詩文章でも書おぼへ、所まだらに傷寒論の会が一ぺん通り済やすまずに、自古方家、或は儒医などゝは名乗れども、病は見えず、薬は覚えず、漫に石膏芒硝の類を用て殺ゆゑ、死て此土へ来るもの格別に色も悪く痩おとろへて、正真の地獄から火を貰に来たと云ふやうな形になる事、是皆当世
の医者共、己が盲はかへりみず、仲系、孫子邈、 張子和など同じやうに心得て、鸕鷀の真似をする烏なれば、かあいや路考も薬毒に中て死たらば、花の姿を引かへて、火箸に目鼻と痩おとろへば、呼寄てから詮もなし。何とぞ無事に取寄て互ちん/\ちがひの手枕に娑婆と冥途の寝物語、縁につるれば、日の本の若衆の肌を富楼那の弁、舎利弗が知恵、目連が神通をかりてなりとも片時もはやく呼寄て、朕が思ひをはらさせよと、しほ/\として宣へば、さしもの