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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻05

▼開

画(ゑがき)たる菊之丞(きくのぜう)が絵姿(ゑすがた)なり。若気(わかげ)とは云(いひ)ながら師匠(しせう)、親(おや)の目(め)をかすめたる科(とが)、一々(いち/\)鉄札(てつさつ)に記置(しるしおき)たり。しかしながら今時(いまどき)の坊主(ばうず)、表(おもて)むきは抹香(まつかう)くさい皃(かほ)しながら遊女(ゆうぢよ)狂(ぐる)ひにうき身(み)をやつし、鳧(かも)を明神(みやうじん)、葱(ねぎ)を神主(かんぬし)などゝと名付(なつけ)、取喰(とりくら)ふから見(み)れば、坊主(ばうず)の優童(やろう)狂(ぐる)ひは、其罪(そのつみ)軽(かるき)に似(に)たれば剣(つるぎ)の山(やま)の責(せめ)一等(いつとう)を許(ゆるし)、彼(かれ)が好所(このむところ)の釜(かま)いりに仕(つかまつ)らんと窺(うかゞへ)ば、閻王(ゑんわう)以(もつて)の外(ほか)怒(いから)せ給ひ、いや/\彼(かれ)が罪(つみ)、軽(かるき)に似(に)て軽(かる)からず。都(すべ)て娑婆(しやば)にて男色(なんしよく)といへる事有(ことある)よし、我(われ)甚(はなはだ)合点(がてん)ゆかず。夫婦(ふうふ)の道(みち)は陰陽(いんやう)自然(しぜん)

なれば其(その)はづの事(こと)なれども、同(おな)じ男(をとこ)をおかすこと決(けつし)て有(ある)べからず事(こと)なり。唐土(もろこし)にては久(ひさ)しき世(よ)より有(あり)て、書経(しよきやう)には頑童(ぐわんどう)を近(ちかづく)る事(こと)なかれといましめ、周(しう)の穆王(ぼくわう)は慈童(じどう)を愛(あい)してより菊座(きくざ)の名始(なはじま)り、弥子瑕(びしか)、董賢(とうけん)、孟東野(もうとうや)が類(たぐひ)、また日本(につぽん)にては弘法(こうぼふ)大師(だいし)渡天(とてん)の砌(みぎり)、流砂川(りゆうさがは)の川上(かはかみ)にて文殊(もんじゆ)と契(ちぎり)をこめしより、文殊(もんじゆ)は支利(しり)ぼさつの号(がう)を取(とり)、弘法(こうぼふ)は若衆(わかしゆ)の祖師(そし)と汚名(おめい)を残(のこ)し、熊谷(くまがへ)の直実(なほざね)は無官(むくわん)の太夫(たいふ)敦盛(あつもり)を須广(すま)の浦(うら)にて引(ひき)こかし、ハリハドツコイなされけるとうたはれ、