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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻12

▼開

いとやすし。誰(たれ)かある、天狗(てんぐ)どもを召寄(めしよせ)よと呼(よば)はり給へば、五官王(ごくわんわう)、しばしと押(おし)とめ、いや/\此(この)評議(へうぎ)、宜(よろし)かるまじ。情(なさけ)を知(し)らぬ天狗(てんぐ)ども、力(ちから)にまかせ引抓(ひつつかむ)で、もし疵付(きずつけ)ては悔(くやん)で返(かへ)らず。それより疫神(やくじん)を遣(つかわ)さるゝが近道(ちかみち)ならんと申さるれば、変成王(へんじやうわう)かぶり打(うち)ふり、イヤ/\疫病神(やくびやうがみ)といへども、のふさんころり山椒味噌(さんしよみそ)と手短(てみじか)に殺事(ころすこと)はなりがたし。太陽経(たいやうけい)から段々(だん/\)伝経(でんけい)をしている内(うち)には、大王(だいわう)御待遠(おんまちどほ)なるべければ、疫病神(やくびやうがみ)は御無用(ごむよう)たるべし。一向(いつかう)それより近道(ちかみち)は、今(いま)世上(せじやう)に沢山(たくさん)なる医者(いしや)ども

に申付(まをしつく)れば、一(いつ)ふくにてもやり付(つく)る事(こと)、疫神(やくじん)などのおよぶべき所(ところ)にあらず。此使(このつかひ)は医者共(いしやども)に申付んと申(まを)さるれば、皆(みな)尤(もつとも)とうなづき、先(まづ)よく殺(ころす)医者(いしや)は誰々(だれ/\)ならんと評定(へうぢやう)ありけるに、一向(いつかう)文盲(もんもう)なる医者は、こはがつてめつたなる薬はもらず。何見(なにみ)せても六君子湯(りつくんしたう)、益気(えきき)湯の類(たぐゐ)一服(いつぷく)の掛目(かけめ)わづか五分(ごふん)か七分(しちふん)の薬(くすり)にて、白湯(さゆ)に香煎(かうせん)も同然(どうぜん)。つまる所(ところ)は一(いつ)ふくで何分(なんぷん)ツヽのわりを以(もつて)謝礼(しやれい)をせしめる計(ばかり)にて、毒(どく)にもならず薬にもならざれば、そろ/\干(ほし)べりのするは格別(かくべつ)、急(きふ)に