の新地獄をこしらへて、岡場所地獄と称し。 三途川の婆も一人にてはなか/\手がまはり得ぬとて、久敷地獄に堕居たりし浅草の一ッ屋の婆、安達が原の黒塚婆、堺町の笋婆、其外娑婆にてよく嫁をいぢり継子を憎たる悪婆どもの罪を御赦免あり、三途川の婆の加勢に入て段々地獄も広まりければ、彼山師共また/\願を出し、何とぞ新地獄町の大家に成度との願、しかし餓鬼道の分は掃除代が上らされば、節句銭二百文づゝに御定下され度と願は、或は舌を抜鋏の入口、
鉄の棒、火の車の請おひ、釜を新敷仰付られ候よりは、古地獄にて底のぬけたるを取集て鋳懸させ、竹の根を掘燈心も蝋燭屋の切屑を御買上になさるゝが至極下直に付候。少々の事にても地獄の年数は仮初にも百万劫などゝ久々の事なれば、塵積て山師共の謀、又は三途川の古着を一人にて座に仰付られば、其かはりには獄卒衆中、樗蒲一に御まけなされ、虎の皮のふんどしを質に御置なさるゝとも随分利安に仕らん。佐ある時は惣地獄の御うるほひにも相成申べしと