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根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻10

かけても、いろのとれる御顔おかほにてもましまさず。 むかし海老蔵ゑびぞう景清かげきよ狂言きやうげんにて御姿おすがたせしさへ、娑婆しやば者共ものどもはおぢおそるゝに、その御姿おすがたにてぶらつき給はゞ、うさんなもの召捕めしとら大家おほや詮議せんぎせらるゝとき大家おほや釈尊しやくそん名主なぬし大日だいにちいひたりとも證據しやうこ立者たつものもなければ、無縁むゑん法界ほうかい無宿むしゆく仲ヶ間なかまいれられて憂目うきめ給はんはあんうち。それとも御得心おとくしんなくばこの宗帝王そうていわう御前ごぜんにてはらかつさばきまをすべし、御返答ごへんとううけまはらんとせきうついさめけるところ平等王べうどうわうしづ/\と

立出たちいでまをされけるは、宗帝王そうていわう諫言かんげんは、比干ひかんむねをさかれ、伍子胥ごししよまなこをぬかれ、木曽きそ忠太ちうた義仲よしなかいさめ腹切はらきりたるにも、をさ/\おとるべうはあらねども、日頃ひごろ御偏意地おんかたいぢ大王だいわう一旦いつたん仰出おほせいだされたることへんじなはぬ御気質ごきしつ一杯いつぱいみづもつて車薪しやしんすくひがたし。いかほどいさめ給ふとも、うまみゝかぜうしつのはちとやらで、さして御為おためにもならやまのこの手柏てかしわ二面ふたおもに、おとこともおんなともみめよき路考ろかう姿故すがたゆへに、この冥府めいふすて給はんとは、世上せじやう息子むすこ了簡れうけんにして、地獄極楽ぢごくごくらく