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根南志具佐(ねなしぐさ)

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻07

▼開

度(たし)と申(まをす)がごとし。其上(そのうへ)娑婆(しやば)の評判(ひやうばん)を余所(よそ)ながら菊之丞(きくのぜう)が絶色(ぜつしよく)なる事(こと)、兼(かね)てよりかくれなければ、せめて此世(このよ)の思(おも)ひ出(で)に絵姿(えすがた)なりとも見(み)まほしシ。此義(このぎ)は何(なに)とぞ御免(ごめん)を蒙(かうふり)たしと願(ねが)へば、閻王(ゑんわう)は不機嫌(ふきげん)にて、蓼喰(たでく)ふ虫(むし)も好(す)き/\とは其方(そのはう)が事(こと)なり。然(さ)れども、たつての願(ねがひ)もだしがたし、絵図(ゑづ)を見(み)る事(こと)は勝手(かつて)次第(しだい)たるべし。しかし、おれは若衆(わかしゆ)を見(み)るは嫌(きらひ)なれば、絵(ゑ)の有内(あるうち)は目(め)を閉(とぢ)て見(み)まじき程(ほど)に、早(はや)とく/\と御目(おんめ)を閉(とぢ)させ給へば、 彼(かの)罪人(ざいにん)が持(もち)たりし姿絵(すがたゑ)を柱(はしら)に掛(か)けるに、清如三春柳含二(きよきことは しゆんりうのしよ)

初月一(げつをふくむがごとく)、艶似三桃花帯二暁烟一(ゑんなることは とうくわのけうゑんをおぶるににたり)、その姿(すがた)のあてやかなる事(こと)ゑもいはれざれば、人々(ひと/\)は目(め)もはなさず、はつと感(かん)じて暫(しばらく)は鳴(なり)もやまず、誠(まこと)や娑婆(しやば)にてうつくしきものは天人(てんにん)の天降(あまくだり)たるといへども、それは畢竟(ひつきやう)遠(をき)が花(はな)の香(か)なり。此国(このくに)の極楽(ごくらく)にては、几巾(たこ)を登(のぼ)す同然(どうぜん)に常(つね)に見(み)る天人(てんにん)なれば美(うつく)しいとも思(おも)はず、路考(ろかう)とくらべて見(み)る時(とき)は、閻广王(ゑんまわう)の冠(かんむり)と餓鬼(がき)のふんどし程(ほど)の違(ちがひ)あり。聞(きゝ)しにまさる路考(ろかう)が姿(すがた)、古今(こゝん)無双(ぶそう)の器量(きりやう)かなと、十王(じふわう)を始(はじめ)として、見(み)る目(め)は目玉(めだま)を光(ひか)らし、