お江戸のベストセラー

根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻07

たしまをすがごとし。其上そのうへ娑婆しやば評判ひやうばん余所よそながら菊之丞きくのぜう絶色ぜつしよくなることかねてよりかくれなければ、せめて此世このよおも絵姿えすがたなりともまほし此義このぎなにとぞ御免ごめんかうふりたしとねがへば、閻王ゑんわう不機嫌ふきげんにて、蓼喰たでくむしき/\とは其方そのはうことなり。れども、たつてのねがひもだしがたし、絵図ゑづこと勝手かつて次第しだいたるべし。しかし、おれは若衆わかしゆるはきらひなれば、有内あるうちとぢまじきほどに、はやとく/\と御目おんめとぢさせ給へば、 かの罪人ざいにんもちたりし姿絵すがたゑはしらけるに、清如春柳含きよきことは しゆんりうのしよ

初月げつをふくむがごとく艶似桃花帯暁烟ゑんなることは とうくわのけうゑんをおぶるににたり、その姿すがたのあてやかなることゑもいはれざれば、人々ひと/\もはなさず、はつとかんじてしばらくなりもやまず、まこと娑婆しやばにてうつくしきものは天人てんにん天降あまくだりたるといへども、それは畢竟ひつきやうをきはななり。此国このくに極楽ごくらくにては、几巾たこのぼ同然どうぜんつね天人てんにんなればうつくしいともおもはず、路考ろかうとくらべてときは、閻广王ゑんまわうかんむり餓鬼がきのふんどしほどちがひあり。きゝしにまさる路考ろかう姿すがた古今こゝん無双ぶそう器量きりやうかなと、十王じふわうはじめとして、目玉めだまひからし、