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根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻08

かぐはなはなをいからし、其外そのほか一座いちざありあふたる牛頭馬頭ごづめづ阿防羅刹あばうらせつまでひたいつの振立ふりたてかんずるこゑやまざりければ、閻王ゑんわうおぼへずをひらき御覧ごらんじけるに、こよなふあてやかなるにこゝろうごきはじめわらひしことはどこへやら、たゞ茫然ばうぜん空蝉うつせみのもぬけのごとくになりて、おぼへ玉座ぎよくざよりころびおち給へば、 皆々みな/\おどろきいだきおこたてまつれば、やうやく正気しやうきつかせ給ひ、ためいきをほつとつき、扨々さて/\かた/\がまへ面目めんぼくもなきことながら、われおもはずもこの絵姿ゑすがたのみやびやかなるにまよりたるこゝろなに遍照へんぜう

うたのさまなるわがふるまひ、さてつく/\とあんずるに、いにしへより美人びじんきこかずもかぎらぬ其中そのなかにも、またならぶべきひともなし。西施せいしがまなじり、小町こまちまゆ、楊貴妃がくちびる赫奕姫かくやひめ鼻筋はなすぢ飛燕ひえんこしつき、衣通姫そとおりひめ衣裳いしやうこなし、ひっくるめたるこの姿すがたきり御守殿ごしゆでん山丹ひめゆり娘盛むすめざかり瞿麦なでしこの、などゝは並々なみ/\こと、花にも月にも菩薩ぼさつにもまたあるべきともおもほへず、ましてから日本につぽんにかゝるもの二度にどしやうずべきにあらざれば、われこれより冥府めいふ王位わうゐすて娑婆しやばいで此者このものまくらをかわ