入て命を捨たる蜒人にも異なり。此世にもあらぬ世界の極楽と地獄の真中に閻魔大王となんいへる、やんごとなき方ぞまし/\ける。此大王三千世界を領し給ふことなれば、十王を始として朝廷の臣下数もかぎらず。それ/\の役を司者多し。されば人間の世渡、士農工商の各隙なきも断ぞかし。閻广王宮も昔はさのみ鬧敷もあらざりしが、近年は人の心もかだましくなりたるゆゑ、様々の悪作る者多く、日にまして罪人の数かぎりもあらざれば、前々より有来の地獄にては中々
地面不足なりとて、閻广王こまり給ふ折を窺、山師共は我一と内證より付込、役人にてれん追従賄賂などして、さま/\の願を出し、極楽海道十万億土の内にてあれ地を見たて、地蔵の領分、茄子畠の辺までを切ひらき、数百里の池を掘、蘇枋を煎じて血の池をこしらへ、山を築ては剣の苗を植させ、罪人をはたく臼も獄卒どもの手が届かざればとて水車を仕懸させ、焦熱地獄には人排を仕かけ、其外、 叫喚、大叫喚等活、黒縄、無間地獄等の外にさま/\