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根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻02

いりいのちすてたる蜒人あまびとにもことなり。此世このよにもあらぬ世界せかい極楽ごくらく地獄ぢごく真中まんなか閻魔ゑんま大王だいわうとなんいへる、やんごとなきかたぞまし/\ける。この大王だいわう三千世界さんぜんせかいりやうし給ふことなれば、十王じふわうはじめとして朝廷てうてい臣下しんかかずもかぎらず。それ/\のやくつかさどるものおほし。されば人間にんげん世渡よわたり士農工商しのうこうしやうおの/\ひまなきもことはりぞかし。閻广ゑんま王宮わうきうむかしはさのみ鬧敷いそがわしくもあらざりしが、近年きんねんひとこゝろもかだましくなりたるゆゑ、様々さま/\あくつくものおほく、にまして罪人ざいにんかずかぎりもあらざれば、前々まへ/\より有来ありきたり地獄ぢごくにては中々なか/\

地面ぢめん不足ふそくなりとて、閻广王ゑんまわうこまり給ふをりうかゞひ山師共やましども我一われいち内證ないしやうより付込つけこみ役人やくにんにてれん追従ついしやう賄賂まいないなどして、さま/\のねがひいだし、極楽ごくらく海道かいだう十万じふまん億土おくどうちにてあれたて、地蔵ぢぞうぼさつ領分りやうぶん茄子なすびばたけへんまでをきりひらき、数百里すうひやくりいけほり蘇枋すはうせんじていけをこしらへ、やまつきてはつるぎなへうゑさせ、罪人ざいにんをはたくうす獄卒ごくそつどものとゞかざればとて水車みづぐるま仕懸しかけさせ、焦熱せうねつ地獄ぢごくには人排たゝらかけ、其外そのほか叫喚きやうくわん大叫喚だいきやうくわん等活とうくわつ黒縄こくじやう無間地獄むけんぢごくとうほかにさま/\