お江戸のベストセラー

根南志具佐ねなしぐさ

原文(一之巻)

根南志具佐 一之巻01

根奈志具佐ねなしぐさ一之巻いちのまき

公無こうかをわたることなかれ公竟渡こうつひにかをわたる河而死かにおちてしす公何まさにこうをいかんすべき」とからうたつくりしは、唐土もろこしいにしへおつとみづおぼれしゝたるをなんかなしみにたへざる妹子わぎもこなげきとかや。されば宝暦ほうれきとをあまりみつとし水無月みなづきころ荻野おぎの八重桐やへぎりとなんいつる俳優人わざおぎひとみづいりしゝたること取沙汰とりさたのまち/\にして、それとさだめたること知人しるひとなし。そのよりきたところたづぬるに、皓々かう/\しろきもつ世俗せぞく塵埃ぢんあいかうふらんやといきどほりて、汨羅べきらしづみ屈原くつげんたぐいにもあらず、龍宮りうぐうたまとらんと海底かいていとび