お江戸のベストセラー

風流志道軒伝ふうりゅうしどうけんでん

原文(巻之五)

風流志道軒伝 巻之五 01

風流志道軒伝 巻之五

抑々そも/\不二権現と申[し]奉るは、駿州有度の郡に鎮座ちんざまします、まつるところ大山祇命つみのみことむすめ木花開耶媛このはなさくやひめにて、是を浅間せんげんの社と申[し]奉る。されば神の㚑妙れいみやうはかるべからず、異国より不二山ふじさんをはりぬきの用意ある事、たちまちしろしめされければ、我守護しゆごの名山を唐土へうつされては日本のはぢなりとて、愛鷹あしたかの明神に御内談まし/\て、曾我そが兄弟の神を早使にて伊勢八幡の両社へ御注進ありければ、即時に諸国へふれをまはし、則[ち]不二山の絶頂ぜつてう八百やお万の神々、神