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風流志道軒伝ふうりゅうしどうけんでん

原文(巻之四)

風流志道軒伝 巻之四 01

風流志道軒伝 巻之四

扨それよりも、浅之進は羽扇にまかせ飛[び]廻りて、北より南へながれたる大河の辺におり立[ち]けるが、草木の形も見なれざるもの多く、川水の色もことなるさまになん見ゆれば、帰国の咄のたねにもなるべし、いざや歩行かち[り]してみんとは思ひながら、深き浅きのそこひさへしらぬ国の川なれば、人の渡りを松が根にこし打懸[け]て、向ふをはるかに見渡せば、川の半に人、四五人歩行かち渡りの体なるが、水は腰にも至らざれば、見懸[け]にも似ず浅き川にぞ有けるとて、もすそをかゝげて渡りけるに、其深さ丈にあまれる